ドネルケバブ巡るトルコ・ドイツの「規格戦争」が事実上終結

(EU、トルコ、ドイツ)

デュッセルドルフ発

2025年10月10日

トルコが欧州委員会に申請していた「ドネル(ケバブ)」の伝統的特産品保証(TSG)登録が加盟国からの多数の異議を受け、9月23日に撤回された。複数メディアが報じた。もし申請が認められれば、使用可能な肉の種類(生後16カ月以上の牛肉、生後6カ月以上の羊肉、鶏の胸肉・もも肉)や、スライスの厚さ、マリネの方法、使用するナイフの種類などが厳格に規定される予定だった。

TSG制度はEUの品質制度の1つで、特定の製法やレシピに基づく伝統的食品を保護するものだ。地理的な原産地とは関係なく、伝統的な製造方法や組成を保証する制度で、登録された名称は規定された仕様に準拠した製品にのみ使用が許される。

今回の申請に対し、ドイツのドネルケバブ業界が強く反発したと報じられている。ドイツではトルコ系移民の影響で独自に進化したケバブ文化が根付いており、子牛肉や七面鳥を使用し、野菜やソースを加えたスタイルが一般的だ。連邦農業・食料・故郷省やトルコ系のジェム・オズデミル前食料・農業相も「ドネルはドイツの一部」として反対の姿勢を示していた。

欧州委は、申請者と反対者の間で合意が得られなかったことを受け、提出された情報を基に登録の可否を判断する予定だったが、最終的に申請者のトルコ側が申請を取り下げた。欧州でのドネルケバブの「規格戦争」は事実上の終結を迎えた。

なお、欧州委員会のTSG登録データベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、日本からの登録例は現在のところ確認されていない。日本食が世界的に注目される中、製法の伝統性や品質の一貫性を国際的に示す手段として、TSG制度の活用は日本食のブランド価値向上にもつながる可能性がある。

(吉森晃、佐藤吉信)

(EU、トルコ、ドイツ)

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