ロシア中銀、政策金利を16.5%に引き下げ
(ロシア)
調査部欧州課
2025年10月30日
ロシア中央銀行は10月24日の金融政策決定会合で、主要政策金利(キーレート)を17.0%から16.5%に引き下げ、27日から適用した(添付資料図参照)。これで4会合連続の利下げとなる。
中銀のエリビラ・ナビウリナ総裁は24日の記者会見で、インフレは主にガソリンや野菜の価格上昇などの一時的な要因によって加速していると述べた。基調的な物価上昇率は依然として4~6%の範囲にあり、持続的な鈍化傾向は見られないと指摘した。企業や家計のインフレ期待は高い水準を維持しており、企業の価格期待は10月に上昇した。主に商業で上昇がみられ、今後予定される増税によるものだという。家計の価格期待も10月時点で高水準にとどまっている。
ナビウリナ総裁はロシア経済について、2025年第3四半期(7~9月)に成長が減速したと指摘した。医薬品や食品、外食、観光などの分野は堅調だった一方で、冶金(やきん)・石炭などの産業は低迷した。消費は、自動車の廃車税引き上げ前の駆け込み需要の影響もあり、やや加速した。投資需要は高水準を維持しているが、業種や企業によってばらつきが見られる。今後の見通しについて、ロシア中銀は24日に発表した中期予測で、2025年のGDP成長率見通しを7月時点の1.0~2.0%から0.5~1.0%に下方修正した。ナビウリナ総裁は、2026年以降は成長率が加速すると述べた。
労働市場をみると、失業率は過去最低水準で推移し、賃金は労働生産性を上回る伸びを続けている。しかし、同総裁は「労働市場に緩和の兆しが幾つかみられる」と指摘した。
金融環境は引き締めの状態が続いている。金融緩和により7~8月の市中の金利は低下したが、10月には下げ止まった。企業向け融資は加速しており、2025年の企業向け融資の成長率は10~13%が見込まれている。一方、家計の貯蓄意欲は高く、ディスインフレの要因となっている。
外部環境について、ナビウリナ総裁はルーブル高に言及し、その背景として高金利による通貨ルーブル建て資産の魅力の高まりを挙げた。企業の外貨需要が秋口にかけて減少したことも一因だと説明した。リスクについては、予想を上回る融資の伸びや労働力不足の深刻化によるインフレリスクに加え、原油市場が供給過剰に転じていることから、価格下落リスクが高まっていることも懸念材料として挙げた。
今後の見通しについて、中銀は2026年後半に基調インフレが4%に回帰し、2027年以降は目標水準で安定すると予測している。ナビウリナ総裁は、インフレ率の抑制にはこれまでの想定よりも高い政策金利が必要だとし、2026年の政策金利レンジを13~15%に引き上げたと説明した。
次回の金融政策決定会合は12月19日に予定されている。
(小野塚信)
(ロシア)
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