米オープンAI、ChatGPT内で購入から決済まで完結可能に、進化するオンライン上での購買体験

(米国)

ニューヨーク発

2025年10月22日

米国の対話型人工知能(AI)の開発を手掛けるオープンAI(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)は9月29日、同社が開発を手掛ける対話型AI「ChatGPT」上で商品の検索から決済まで完結できる「インスタント・チェックアウト(即時決済)」という新サービスの提供を開始した。また、10月14日には、本サービスの活用について米国小売り大手ウォルマートと提携することを発表した。

オープンAIが提供する新サービスは、決済大手ストライプと共同開発した「エージェントコマースプロトコール」を基盤としており、商品が新機能に対応している場合、利用者は「購入」ボタンを選択すると、注文内容、配送先、支払い情報を確認するだけで、チャット内で購入を完了できることが特徴だ。オープンAIは、このサービスを活用して、商品発見や推薦、決済を含む、エージェントコマース(注1)でEコマース分野に参入していく構え。このサービスについては、既に、中小企業向けEC(電子商取引)プラットフォーム最大手ショピファイの加盟店で導入されることが決定しているが、今回の提携により、ウォルマートおよび同社傘下にある会員制大型スーパーチェーン「サムズクラブ」の顧客も、既存アカウントを通じて、ChatGPT内でウォルマートの商品を直接購入することが可能になる。

こうした小売業における対話型AIの普及は、オンラインショッピングの在り方に新たな潮流を生み出す可能性を秘めている。消費者は、従来のECサイトが提供してきた「検索してカートに入れる」という購買行動から離れ、AIとの対話を通じて、個々のニーズに厳選された推奨品や比較情報、そしてより簡単な決済体験へと移行する動きが高まる可能性がある。また、今回、ウォルマートが、オープンAIとの統合について、「小売業者は顧客のニーズをより深く理解し予測できるようになり、小売り体験を単なる反応型から脱却させ、よりパーソナライズされた能動的な体験へと進化させることが可能になる」と説明しているように、小売事業者にとってもより消費者の需要に的確に応えられるようになる可能性がある。

このようなことから、多くの小売企業や買い物客が購買体験において実際にAIを積極的に活用しはじめており、小売業界におけるAI導入の重要性が高まっている。米国ソフトウエア大手アドビシステムズが実施した調査(注2)によると、回答者の3分の1以上がオンラインショッピングでAI搭載サービスを利用した経験があると回答した。主な利用目的は、商品の情報収集(53%)、商品推薦(40%)、お買い得品探し(36%)、贈答品のアイデア探し(30%)などの回答が挙がった。また2025年の年末商戦期間においては、AI経由の流入トラフィック(注3)が前年比5.2倍と急増し、感謝祭前の10日間でピークに達すると見込まれている。

(注1)AIエージェントがユーザーの代わりに、商品検索から購入までの一連のプロセスを自律的に実行する新たな購買体験の仕組み。

(注2)実施時期は9月9~16日、対象者は全米の成人5,000人。

(注3)ウェブサイトやアプリにユーザーが訪れる流れ、またはその訪問者数を指す。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 0d15f2ab395ea3cc