連邦政府が2050年ネットゼロ中間目標発表、2035年に2005年比62~70%削減目指す
(オーストラリア)
シドニー発
2025年10月02日
オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は9月18日、気候変動庁の助言を踏まえ、パリ協定への義務に沿って、2035年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2005年比で62~70%削減する目標を発表した。アルバニージー政権はモリソン前政権が掲げた「2050年までのネットゼロ目標」を支持し、2022年9月に気候変動法を制定して、2030年までに2005年比で43%削減する目標を法制化していた。今回の発表は、気候変動対策と経済的な機会獲得に向けた次なるステップと位置付けられている。
中間目標では、既存政策を基盤として、次の5つの優先分野を挙げた。
- 経済全体にわたるクリーンエネルギーの拡大:再生可能エネルギー発電の増加、新たな送電網と蓄電池(家庭用を含む)の導入
- 電動化と効率化による排出量削減:新車効率性基準により、消費者の電気自動車(EV)への移行を支援、エネルギー効率の向上
- クリーン燃料の利用拡大:低炭素液体燃料産業の確立、グリーン水素支援
- 新技術の推進:新産業の自国生産を支援する「フューチャー・メード・イン・オーストラリア」への投資、オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)によるイノベーション支援
- 炭素除去の拡大:土地所有者による炭素貯留の収益化、信頼性の高い炭素クレジット制度の整備
さらに、連邦政府は目標達成を支援するため、次の政策への投資を明らかにした。
- 50億オーストラリア・ドル(約4,850億円、豪ドル、1豪ドル=約97円):国家再建基金内にネットゼロ基金を創設し、産業施設の脱炭素化と再生可能エネルギー・低排出ガス製造の拡大を支援
- 20億豪ドル:電力価格抑制のためにクリーンエネルギー金融公庫(CEFC)への支援
- 11億豪ドル:国内でのクリーン燃料生産の拡大
- 4,000万豪ドル:電気自動車(EV)急速充電を郊外や遠隔地を含む全国へ展開
- 8,500万豪ドル:家庭や企業がエネルギー効率を理解し、改善するための枠組みとツールの設定
- 5,000万豪ドル:スポーツクラブの脱炭素化と気候変動対策への支援
アンソニー・アルバニージー首相は今回の目標について、野心的だが達成可能とし、適切な投資を呼び込むシグナルを発し、科学的知見と実行可能な計画に基づいて進めると述べた。排出量削減が最も必要な分野は電力、運輸、産業で、その実現では、政府機関や民間セクター、産業界の協力が不可欠だとした。また、首相は9月25日、国連総会に併せて米国ニューヨークで開催された気候変動会合「クライメート・ウイークNYC」でも、オーストラリアを魅力的な投資先としてアピールした。
(山崎美樹)
(オーストラリア)
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