インドネシア、外資企業設立時の最低払込資本金額を引き下げ
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年10月09日
インドネシア投資・下流化省(BKPM)は2025年10月2日、リスクベース許認可の実施および投資優遇の手続きを定めるBKPM規則2025年第5号を施行した。本規則により、外国企業(PMA)の最低払込資本金に関する要件が改正された。従来のBKPM規則2021年4号では、外資企業に対して土地・建物を除く投資総額100億ルピア(約9,000万円、1ルピア=約0.0090円)超と同額の払込資本金が求められていたが、新規則では、総投資額100億ルピア超という基準は維持しつつも払込資本金の最低額を25億ルピアに引き下げ、設立時の負担を大幅に軽減した。
今回の改正では、最低払込資本金は引き下げられた一方で、土地・建物を除く投資総額が事業区分(5桁のKBLI番号)および事業ロケーションごとに100億ルピアを超える必要があるという基準は維持された。ただし、この最低投資額の計算方法には、いくつかの重要な緩和措置が導入された。例えば、飲食業では、従来1事業ロケーションごとに100億ルピアの投資が必要だったが、事業ロケーションの定義が「県(Kabupaten)または市(Kota)」単位となった。これにより、同一県・市内に複数店舗を出店する場合でも、合計で100億ルピアの投資計画で済むようになり、多店舗展開が容易になった。同様に、電気自動車(EV)充電ステーション事業では、投資額が「州(Provinsi)」単位で計算されることになり、同一州内での広域的なインフラ整備がしやすくなる。さらに、原則として投資額に含まれない土地・建物についても、不動産開発、宿泊施設、農業、プランテーション、畜産、水産養殖といった資本集約型産業においては、例外的に投資額への算入が認められることになった。
今回の改正は、資本要件の緩和だけでなく、許認可手続きの迅速化と予見性の向上にも及ぶ。その中心的な措置が、上位規定である政令2025年28号で制度化された「正の推定」だ。これは、申請が必要な要件を満たしているにもかかわらず、行政機関がサービスレベル合意(SLA)で定められた期間内に応答しない場合、法的に承認されたとみなされる仕組みだ。BKPM規則2025年第5号は、この原則をオンライン・シングル・サブミッション(OSS)システムで運用するための具体的な手続きを定めている。
この措置の狙いについて、BKPMのトドトゥア・パサリブ副大臣は、許認可の遅れによって他国に後れを取っている現状を打破し、事業者に時間の確実性を提供するための重要な取り組みであると述べた(「アンタラ」10月2日)。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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