セミナー「アルゼンチン中間選挙とミレイ政権の行方」を開催

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2025年10月17日

ジェトロは10月9日、アジア経済研究所地域研究センターの菊池啓一主任調査研究員を講師に「2025年アルゼンチン中間選挙の見通しとミレイ政権の行方」をテーマとしたセミナーを開催した。講演内容を紹介する。

現在、ミレイ政権は議会で少数派にとどまり、下院37議席、上院6議席と法案成立が困難で、通常の立法よりも大統領の憲法上の権限である必要緊急大統領令(DNU)に依存する状況が続く。議員の投票行動に反映されるという点で州知事の影響力は強く、大統領は財政移転や国庫補助金を通じて州知事を取り込む戦略を取るのが常だが、ミレイ政権は州知事との関係構築に苦慮している。

10月26日には国会議員中間選挙が行われる。下院257議席の半数が、上院72議席の3分の1が改選される。今回は予備選挙(PASO)が廃止され、投票用紙は単一方式に変更となった。

全国レベルの主要勢力は、ミレイ氏率いる与党・自由前進(LLA)、ペロン主義の祖国の力(FP)、5州の州知事を中心とする諸州連合(PU)、左派の労働者統一戦線の4つ。サン・アンドレス大学が9月に実施した投票意向に関する世論調査によると、LLA31%、ペロン主義26%となっている。LLAはスキャンダルや州知事との対立で逆風下にあり、9月7日にブエノスアイレス州で実施された州議会議員選挙で苦戦。改選後、LLAは下院で3分の1(86議席)を確保できるかどうかが注目される。上院はペロン主義の優位が続く見込みだ。

大統領は国会を通過した法案に対して拒否権を行使することができるが、国会がそれを覆すには、上下院それぞれで3分の2以上の賛成が必要なため、下院で3分の1を確保していれば、拒否権が覆されることはない。そのため、下院での3分の1の議席確保が鍵となっている。中間選挙後も拒否権やDNUが重要な手段となることが見込まれる。マウリシオ・マクリ元大統領率いる共和国提案(PRO)との連携も鍵になりそうだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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