米国の医薬品関税100%措置、長期的影響を懸念
(シンガポール、米国)
シンガポール発
2025年09月30日
シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は9月28日、地元記者団のインタビューに応じ、米国のトランプ大統領が同月26日に自身のSNSで、10月1日付で医薬品に100%の関税を課すと発表したことを受け、長期的な投資環境への影響を懸念していると述べた。
ガン副首相によると、シンガポールの輸出医薬品の19%が米国向けであり、対米地場輸出(注)の約13%を医薬品が占める。シンガポールは現在、対米輸出品について10%の基本関税の対象となっており、医薬品への関税については協議を進めていた(2025年7月15日記事参照)。トランプ大統領はSNSの中で、米国で医薬品製造プラントを建設中か、着工した医薬品会社が製造する医薬品に対し関税を課さない方針を示した。ガン副首相は同方針を受けて医薬品製造会社に問い合わせた結果、その多くが米国で投資計画があるか、追加投資を行う計画があるとの回答があったと説明。「このため、今回の関税の直近の影響が限定的である可能性もある」と述べた。
ガン副首相は、医薬品関税が長期的な投資環境に与える影響への懸念について、米国と合意した多くの国々が、医薬品だけでなく、包括的な投資を行うことを約束していると指摘。「本来、シンガポールや近隣地域に向かうはずだったこれら投資の一部の資源や資金が、米国に振り向けられる可能性がある」と語った。
2025年下半期に入り、製造や輸出が減速
一方、シンガポールでは2025年下半期に入り、製造や輸出活動が減速している。経済開発庁(EDB)によると、8月の製造業生産指数が前年同月比7.8%減だった。同指数が前年同月比でマイナスとなるのは、2024年6月以来だ。部門別では、医薬品が59.3%減と大幅減となり、電子が4.8%減だった。
また、企業庁(エンタープライズシンガポール、ESG)によると、同国の非石油部門の地場輸出が7月に前年同月比4.7%減となった後、8月に11.3%減と2カ月連続のマイナスになった。
(注)シンガポールの輸出は、シンガポールで積み替え輸出される「再輸出」と、国内で生産される「地場輸出」からなる。石油部門を除く非石油地場輸出が同国の輸出指標とされる。
(本田智津絵)
(シンガポール、米国)
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