「2045年ドイツ乗用車分野における合成燃料分析」レポート、合成燃料よりBEVが効率的と指摘

(ドイツ)

ミュンヘン発

2025年09月26日

ドイツのNPO「気候中立ドイツイニシアティブ」は9月9日、米国調査機関のセンター・フォー・オートモーティブリサーチ(CAR)に調査委託した「2045年のドイツ乗用車分野における合成燃料のシナリオ分析」レポートを発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同レポートは、CARとニーダーザクセン州の応用科学大学であるオストファリア大学の協力のもと作成された。

2021年の改正気候保護法により、ドイツは2045年までに温室効果ガス(GHG)排出をゼロにする目標を掲げている(2021年7月6日記事参照)。その目標達成に向けて、乗用車分野においてバッテリー式電気自動車(BEV)のほか、合成燃料の使用について国内で議論が進められている。

CARのレポートでは、今後の合成燃料の使用を3つのシナリオ(シナリオA、B、C)で分析することで、交通部門のGHG排出ゼロの達成に向けて合成燃料の果たす現実的な役割を予測。分析には2024年の乗用車統計を使用した。

シナリオAは、合成燃料が優先的に使用され、2045年に国内乗用車全体(約4,700万台)が合成燃料を使用し、BEVがほとんど使用されてない状況を想定。シナリオBは、2035年以降は新車の内燃機関車の販売禁止により新車はBEVで、2045年時点に存続する内燃機関車(約1,500万台)のみが合成燃料を使用している想定。シナリオCは、国内乗用車のほぼすべてが電動化され、BEVに置き換え不可能なクラシックカーなどの一部の乗用車(約130万台)のみが合成燃料を使用する想定となっている。

CARのレポートによると、上記3シナリオを分析したところ、シナリオCのみに費用対効果があるとした。一方、シナリオAとBはコスト上で不利であるほか、合成燃料を輸入する必要があり、地政学的なリスクが高まる恐れがあると指摘。また、合成燃料の製造に際して大きなエネルギーの損失があることからも、乗用車の気候中立達成のためには、合成燃料よりもBEVに注目すべきと結論付けた。

(アンナ・グリンフェルダ)

(ドイツ)

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