プラボウォ大統領、内閣改造を実施、スリ・ムリヤニ財務相らを解任
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年09月11日
インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は9月8日、スリ・ムリヤニ財務相を含む5人の閣僚を退任させ、2025年大統領決定第86/P号に基づき、新設した巡礼省の正副大臣を含む大臣4人と副大臣1人を任命した。
同日、ジャカルタの大統領宮殿で新閣僚の就任式が行われた(9月8日付インドネシア国家官房プレスリリース)。
新たな閣僚として、財務相にプルバヤ・ユディ・サデワ氏、海外労働者保護相にムクタルディン氏、協同組合相にフェリー・ジョコ・ユリアントノ氏、巡礼相にモハマド・イルワン・ユスフ氏、巡礼副大臣にダフニル・アンザル・シマンジュンタク氏が任命された(添付資料表参照)。
インドネシア国家官房は同日、ブディ・グナワン政治・治安担当調整相とディト・アリオテドジョ青年・スポーツ相の退任も発表した。プラセティオ・ハディ国務長官は、政治・治安担当調整相の職は当面、代行者が務めると述べた。青年・スポーツ相の後任は後日、就任式が行われる予定だ。なお、同国務長官は内閣改造の理由について、「大統領の専権事項であり、継続的な評価の結果だ」と述べた(9月8日付インドネシア国家官房プレスリリース)。
今回の内閣改造では、特に財務相の交代が注目されている。長期にわたり財政運営を担ったスリ・ムルヤニ・インドラワティ氏が退任し、預金保険機構(LPS)での実務経験を持つエコノミスト、プルバヤ・ユディ・サデワ氏が就任した。プルバヤ氏は就任後の会見で、政策の継続と改善を基本方針とし、不要な全面的見直しは行わない考えを示した(「アンタラ」9月8日)。さらに、GDP成長率をまず6%程度へ引き上げ、その後2~3年で8%成長の実現を目指す方針を表明した(「アンタラ」9月8日)。また、債務残高対GDP比は、約39%の水準を維持し、財政赤字は法定上限であるGDP比3%以下に抑制すると明言した(「ビスニス」9月9日)。 マッコーリー・キャピタル・インドネシアの調査責任者アリ・ジャジャ氏は「国内景気が減速する中、財政規律を維持したまま政策を実行できるか、プルバヤ新大臣の戦略に注視をしている」と述べた(「アンタラ」9月9日)。
また、宗教省から独立するかたちで巡礼省が新設され、その大臣と副大臣が任命された。巡礼省は、これまで宗教省が管轄してきたハッジ(大巡礼)とウムラ(小巡礼、注)に関する業務を専門に扱う。世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアにとって、巡礼者のためのサービス向上、管理体制の効率化などは重要な課題であり、新省庁の設立で対応を強化する狙いがある(「アンタラ」8月28日)。
(注)イスラム教の巡礼の一形態。ハッジ(大巡礼)は特定の時期に行われるのに対し、ウムラ(小巡礼)は年中いつでも行うことが可能とされる。ハッジは、経済的・身体的に可能な信者が一生に一度は行なうべきものとされる巡礼で、ウムラは、推奨されるものの義務ではない巡礼行為。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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