バイルー内閣が総辞職 、下院が信任案を否決
(フランス)
パリ発
2025年09月11日
フランスの国民議会(下院)は9月8日、フランソワ・バイルー首相が提出した内閣信任案を反対多数で否決した(フランス語)。これを受けてバイルー首相は9日、エマニュエル・マクロン大統領に辞表を提出し、受理された。マクロン大統領は「数日以内に新しい首相を任命する」(大統領府リリース
、フランス語)予定だ。新内閣が成立するまで、バイルー内閣は暫定内閣として職務を継続する。
バイルー首相は8月25日、大幅な歳出削減を柱とした2026年の政府予算法案の提出に向けて、下院において信任を問うために内閣信任案を提出する方針を示していた。バイルー首相の政策運営や、国民に大きな節減を求める予算法案に対して野党勢力からの批判が強まっていたことから、下院で過半数を持たないバイルー内閣が退陣に追い込まれることは確実視されていた。
バイルー首相は投票前の施政方針演説で、野党による政権打倒の動きを「フランスに混乱をもたらすもの」と批判し、「政権は倒されるかもしれないが、現実は消せない」と強調。膨大な財政赤字と歳出の増加に対し、全ての国民による「適度な努力」が必要だと訴えた。
信任投票では、野党勢力の極右「国民連合」、極左「不服従のフランス」、穏健左派「社会党」、環境派、共産党のほか、バイルー政権が連立を組む中道右派「共和右派(旧「共和党)」の議員の一部も不信任に票を投じた結果、信任が194票、不信任が364票という大差で、内閣信任案が否決された。
現地報道によれば、マクロン大統領は後任人事を迅速に進めたい考えだ。首相候補には、大統領支持政党「ルネッサンス」のセバスチャン・ルコルニュ軍事相、カトリーヌ・ボートラン労働相のほか、オー・ド・フランス地域圏議会のグザビエ・ベルトラン議長(中道右派)の名前が挙がっている。また、下院のヤエル・ブラウン=ピベ議長も首相就任に意欲を示しているようだ。
他方、下院で第1党となっている「国民連合」を率いるマリーヌ・ルペン氏は9月9日、自身のX(旧Twitter)で「マクロン大統領は国民議会を解散すべきだ」と主張した。ルペン氏は「解散総選挙を行わないのであれば、マクロン大統領の政策路線から脱却できる首相を任命すべきだ。そうでなければ、同じ轍(てつ)を踏むことになるだろう」と述べ、今後も政治の混乱が続く可能性があると予想した。
(山崎あき)
(フランス)
ビジネス短信 d6c9336d2e184998