山東省、要介護高齢者への財政支援強化

(中国)

青島発

2025年09月19日

中国の山東省民政庁などは8月29日、同省煙台市で「高齢者サービス消費促進キャンペーン『魯楽秋安』(注1)の開幕式と高齢者産業の質の高い発展に向けた銀行・企業マッチング会」を開催した。同省は高齢者サービスに係る消費拡大と、シルバー経済の質の高い発展を目指し、銀行と企業の連携強化を進めている。

開幕式では、中国民政部の担当者が高齢者産業に関する金融・財政政策を紹介した。省内各市の民政局も、住宅の高齢者対応リフォームに対する消費補助金政策やその活用状況などを報告した。例えば、煙台市では6月18日から8月28日の期間で、消費補助金を利用した住宅の高齢者対応リフォームの売り上げが2,307万7,600元(約4億8,463万円、1元=約21円)を記録し、649万5,300元の国家補助金が活用されたことを紹介した。

また、関連企業が施設介護やデイサービス、入浴支援サービス、リハビリなどの分野で高齢者サービスの消費促進に関する提言を発表した。さらに、リハビリ設備の購入、介護型ベッドの増設、認知症専用エリアの改造、スマート管理システムの導入などを目的とした企業の融資ニーズも公表した。

イベントと同時開催した高齢者産業展示会では、身体能力が低下した状態や認知症の高齢者を対象とする養老施設の責任者が現在享受している優遇政策について紹介した。「山東省では条件を満たす養老施設に対して、新築・改築の補助として介護型ベッド1台当たり最大8,000元(注2)の補助金を支給する。また、体能力が低下した状態や認知症の高齢者向け施設には、1人当たり年間最大3,600元の運営補助金が支給される」と述べた。

さらに、民政部と財政部は7月から中度以上の身体能力が低下した状態の高齢者を対象としたサービス消費補助金制度を試行しており、山東省はその対象地域に選ばれている。施設または在宅サービスを利用する場合、個人負担分の40%が補助され、月額上限は800元となっている。‌加えて、長期介護保険を利用する中度以上の身体能力が低下した状態の高齢者や重度認知症の高齢者も、医療・介護サービス購入時に補助を受けられるという。

山東省は中国で最も高齢者人口が多い省で、2024年時点で60歳以上の人口は約2,482万人となっている。このうち約60万人が中度以上の身体能力が低下した状態にあり、身体能力が低下した状態や認知症の高齢者向け介護サービスの需要は今後も増加が見込まれている。

(注1)山東省は高齢者産業発展に関する重点施策の1つに、消費促進キャンペーンの開催を掲げている。同省民政庁は2025年に省レベルで「魯換春欣」「魯頤夏養」「魯楽秋安」「魯福冬暖」という4つの高齢者向けテーマ別消費促進キャンペーンを実施するとしていた。

(注2)省内の各行政区によって異なる。済南市、東営市、煙台市、威海市では、新設・拡張の場合、ベッド1床当たり8,000元、改修や機能向上の場合、同3,000元を補助するとしている。

(董玥涵)

(中国)

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