三峡ダムの貯水開始、長江支流の漢江では水資源の効率的利用を呼びかけ
(中国)
武漢発
2025年09月17日
中国水利部は9月10日、湖北省に位置する三峡ダムの貯水を開始した。長江上流域での水源確保が主な目的だ。
同部の発表によると、2025年に入って長江流域の流水量は全体的に平年を下回っていた。2025年1~8月に長江流域の降水量は平年に比べて1割減、流水量は3割減となり、そのうち長江上流の流水量は2割減少した。こうした状況を受け、長江上流域への給水や灌漑、生態系の維持、船舶の航行、発電などの水需要確保のため、長江水利委員会は洪水対策などを講じて安全を確保した上で、7月中旬以降、長江上流のダム群で干ばつ対策のための貯水を実施してきた。長江上流のダム群の早期貯水計画を実施した結果、9月10日午前8時時点で、長江上流のダム群の貯水量は485億立方メートルとなり、過去5年間の平均を109億立方メートル上回っている。
一方の下流域では、上流域での貯水を受けて、水位が低い状況が続くことが予想される。貯水開始に先立ち、湖北省の防汛抗旱指揮部弁公室は8月25日、最近の天候に基づく干ばつ対策を各地域部門に要請する通知を出していた。通知によると、9月5日から20日の湖北省内の降雨量は30~76ミリにとどまる見通しだ。三峡ダムが9月から貯水期に入り、放流流量は徐々に減少することで、同省内を流れる漢江の水位が低い状態が長期間継続する可能性があると指摘し、干ばつ対策や災害軽減への対応を求めた。具体的には、漢江流域の仙桃市、応城市、鐘祥市、潜江市、漢川市などの地域には、低水位に対する給水の保証の応急対策を策定し、ダムからの取水、臨時ポンプ場の設置、取水施設の改修などの応急措置を要求した。高山地域や遠隔地など給水能力が限られる地域には、井戸水のくみ上げ、給水制限、送水などの応急措置による清潔で安全な水の確保を要求した。農業に関しては、灌漑用水の需要調整、作物の植え付け状況、水需要と灌漑方式を正確に把握し、人工降雨、ダムや機械による水の引き揚げなどを行い、作物の正常な成長を確保する必要があるとした。
貯水を開始した三峡ダム(左)、長江の支流漢江(右)(ともにジェトロ撮影)
(高橋大輔)
(中国)
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