南アの先端材料メーカーが量子コンピューティングやがん治療の材料を初出荷
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2025年09月05日
米国ナスダック証券取引所に上場する、南アフリカ共和国企業のASPアイソトープス(ASP Isotopes)は9月2日、量子コンピューティングに必要な素材で「世界で最も純粋なシリコン」といわれている「シリコン28」と、がん治療などに用いられる「イッテルビウム-176」の最初のサンプルを8月に顧客に対して出荷したと発表した。同社は、複数の産業で使用されるアイソトープ(同位元素)の製造技術・プロセス開発に特化した先端材料会社だ。
同社は、南ア原子力公社(NECSA)、ビル・ゲイツ氏を筆頭株主とする米国の次世代型原子炉の研究開発会社テラパワー(TerraPower)、次世代人工知能(AI)に不可欠な電力網の建設を行う米国のエネルギー開発会社フェルミ・アメリカ(Fermi America)などのパートナーと連携し、エネルギー、医療、半導体、量子コンピューティングなど次世代の産業への貢献を目指している。先端素材の製造を行う3つのプラントで、研究から建設、さらには工場稼働まで3年間でこぎつけた。
同社は、フェルミ・アメリカと合弁事業に関する覚書(MOU)を締結しており、それが重要な一歩だったと述べている。2026年中に、米国で先端材料工場の建設を開始する見込みだ。フェルミ・アメリカとの協業では、小型モジュール炉(SMR、Small Modular Reactor)向けに大量の高純度低濃縮ウラン(HALEU)を生産でき、研究開発も兼ねた大規模な先進核燃料濃縮施設の建設を想定している。同社は、ヘリウムなどの電子材料ガス、各種フッ素化製品、同位体濃縮ガスのグローバルリーダーも目指しており、半導体分野の事業展開にも意欲的だ。
2021年9月に会社を設立した当時は、従業員はわずか2人。現在では170人を超える従業員をかかえており、20%以上が博士号取得者、50%が大学院卒にあたる。ナスダックに上場し、2025年8月27日にはヨハネスブルク証券取引所にも上場を果たした。急成長をとげている同社の業務範囲は、半導体、量子コンピューティング、製薬、次世代エネルギーなどにわたる。
(多崎央)
(南アフリカ共和国)
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