コロナ禍対策の年金特例措置、8回目実施で年金制度見直しが後退
(ペルー)
リマ発
2025年09月25日
ペルー政府は9月19日、「民間年金制度加入者が4課税単位(UIT)まで年金を引き出せる一時的措置とその他の措置に関する法律」(法律第32445号)を公布した。
ペルー銀行保険年金基金監督庁(SBS)が30日以内に細則を公表した後、確定拠出型年金制度(AFP)に加入する労働者は、年齢にかかわらず、最大で4UIT(約89万8,800円、注)まで引き出せる。また、ペルー年金制度近代化法(法律32123号)で定める自営業者などの年金加入義務を廃止する。
新型コロナ禍に労働者の生活支援策として始まった一時引き出し措置は、これで8回目となる。SBSによると、2025年8月25日時点のAFP加入者は1,012万4,518人となっている。エリオ・サンチェス長官は9月17日、議会の経済委員会で、これまでの引き出し措置などによりAFP加入者のうち約220万人は口座に残高がなく、約640万人は残高が1UIT以下となっていることを明らかにした。
自営業者などが8回目の引き出し承認と義務の廃止を求めるデモ活動を続けた結果、議会で見直しの議論が加速した。ラウル・ペレス・レジェス経済財政相は、無年金者が多い現状を改善する必要から、議会による年金引き出し措置を認める動きに一貫して反対していたが(2025年5月26日記事参照)、ディナ・ボルアルテ大統領は9月14日、年金引き出し措置を容認することを発表した。
地元プレスは政府による突然の方針転換で、進行中の年金制度見直しが後退するとして大きく報じた。これに対し、セサル・バスケス保健相は9月15日、地元テレビ局の取材に応じ、「8回目の引き出しは、各加入者が必要性を判断した上で行うことができるが、将来のために残しておくことが基本だ」と述べ、今回の判断は適切だと釈明した。
(注)2025年は1UIT=5,350ソル(約22万4,700円、1ソル=約42円)。
(石田達也)
(ペルー)
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