レゴのブロック部品をめぐるEU司法裁判所の判決、見た目がカギに

(EU、ハンガリー、中国)

デュッセルドルフ発

2025年09月24日

EU司法裁判所(CJEU、注)は9月4日、デンマークの玩具メーカーのレゴ(LEGO)が保有するブロック部品の意匠権をめぐる訴訟で、同社の主張を支持する判決を下した(判決文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

争点となったのは、中国企業の広東キューマン(Qman)玩具産業(以下、キューマン)のブロック部品がレゴの意匠に似ているかどうかという点だ。ハンガリー企業ポジティブ・エネルギアフォラーシュがキューマン製品を輸入しようとした際、レゴの意匠に類似する部品が含まれていたため、税関が差し押さえを命じた。レゴはその差し押さえの維持を求めて、ブダペスト高等裁判所に申し立てを行った。

EU共同体意匠規則第8条第1項では、製品の形状が技術的な機能だけで決まる場合、その形状は意匠として保護されないとしている。つまり、機能を果たすために必要な形は、独占的に保護されない。一方、第3項(「レゴ条項」とも呼ばれている)では、モジュラー型製品の接続部品については、機能的な形状であっても例外的に意匠保護が認められる。

ブダペスト高等裁判所は、レゴの意匠がこの第3項に該当するとしながらも、専門家が細部まで注意深く見れば、キューマン製品はレゴの意匠とは異なる印象を与えると判断し、レゴの申立てを却下した。しかし、ブダペスト控訴裁判所およびハンガリー最高裁判所は、一般のユーザーが見た場合には違いがわからないとして、レゴの主張を認めた。

その後、レゴは意匠権侵害訴訟を再びブダペスト高等裁判所に提起したが、同裁判所はEU法の解釈が不明確として、EU司法裁判所に接続部品の意匠保護に関する法的な判断を求めた。

EU司法裁判所は、意匠が似ているかどうかの判断は専門家ではなく当該商品に一定の関心を持つ一般消費者の視点で行うべきであり、技術的な分析ではなく、見た目の全体的な印象に基づいて判断すべきであるとした。形状や寸法が同じであれば、異なる印象を与えるとは言えないと判断した。

この判決は、たとえ技術的な形状であっても意匠として保護される可能性がある一方で、侵害の判断はあくまで「見た目の印象」に基づくべきであることを明確にした点に意義がある。EU市場でモジュラー型製品を展開する日本企業にとっては、意匠設計における差別化や視覚的な独自性の重要性をあらためて認識する契機となるものだ。

(注)すべてのEU加盟国において、EU法令が一様に解釈・適用されるようつかさどる裁判所。EU加盟各国の裁判所がEU法令の解釈について疑問が生じた場合、各国裁判所は、その解釈についてCJEUに説明を求めることができる。

(吉森晃、佐藤吉信)

(EU、ハンガリー、中国)

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