連邦政府、データセンター事業に新たな税優遇措置を導入

(ブラジル)

サンパウロ発

2025年09月25日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は9月18日、データセンター建設の促進を目的とした税優遇制度「データセンター事業奨励特別プログラム(Redata)」を規定する大統領暫定措置令(MP)第1318/2025号を公布した。施行期間は、2026年1月1日から2030年12月31日までの5年間を予定している。

同制度では、データセンター建設に必要な電子部品やIT・通信機器購入時に、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金(PIS/PASEP)、社会保険融資負担金(COFINS)などの連邦税の支払いが免除される(注1)。税優遇の適用を受けるための主な条件は次のとおり。

  1. データ処理・保管能力の最低10%を国内市場向けに提供すること(注2)。
  2. 電子部品やIT・通信機器購入総額の2%相当額を研究開発に拠出すること(注3)。
  3. クリーンまたは再生可能エネルギー由来の電力のみを使用すること。
  4. 水使用効率(WUE)を、1キロワット時(kWh)あたり0.05リットル以下に抑えること(注4)。

連邦政府は2025年7月21日にも、輸出奨励地区(ZPE、注5)における国外向けデータセンター事業に対する税優遇措置を導入している(2025年8月15日記事参照)。今回の措置令では国外向け事業も対象内となるものの(注6)、政府は国内向け事業の強化を主目的としている。フェルナンド・アダジ財務相は9月17日付の公式リリースで、ブラジル企業のデータのうち国内で処理されている割合は約40%にとどまっており、サービス収支の赤字が増加している旨を指摘し、「国外へのドル流出を防ぐには、ブラジルでのデータ処理事業の拡大が不可欠」と述べた。

業界団体も本制度を評価している。ブラジル情報通信技術事業者協会(Brasscom)は公式サイト(9月18日付)で、Redataが投資拡大につながるとの見方を示した。ブラジルデータセンター協会(ABDC)も、同協会公式サイト(9月19日付)で同意見を表明している。

(注1)IPI、PIS/PASEP、COFINSは、憲法改正法第132号に基づき2027年1月1日以降廃止される予定で、これらに対する税優遇措置は2026年12月31日までの適用となる(2024年3月21日付地域・分析レポート参照)。

(注2)地方都市の開発を目的に、北部、北東部、中西部に設置されるデータセンターについては、国内向け提供割合が8%に緩和される。

(注3)北部、北東部、中西部地域における研究開発拠出割合は1.6%。

(注4)WUE(Water Usage Effectiveness)は、年間の水使用量をIT機器の消費電力で除した指標で、年1回の計算が予定されている。

(注5)ZPEは、輸出向け事業者の誘致により、先進技術を取得・普及し、国内の地域間格差を緩和し、当該地域の雇用創出、社会・経済を発展させることを目的に、国内各所に設置されている。優遇措置として、ライセンス取得義務の規制が緩和されるほか、資材・サービス購入時の輸入税、工業製品税、社会統合基金・公務員厚生年金、社会保険融資負担金などの連邦税や社会負担金の支払いが免除される。現在、国内12州の12カ所がZPEに指定されている。

(注6)ただし、Redataと異なり、ZPEにおける税優遇措置には施行期間の制限はない。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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