東京農業大学、サンパウロ市で産学連携の重要性を講演
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年09月08日
東京農業大学の江口文陽学長は8月25日、サンパウロ市内のブラジル日本商工会議所で開催されたセミナーにおいて、同大学の産学連携の取り組みと日伯交流の歴史について講演を行った。在ブラジルの日系食品メーカーや化学メーカーなども参加し、関心の高さがうかがえた。
江口学長は、東京農業大学が掲げる「実学主義」の理念のもと、企業との連携を通じて地域課題の解決に取り組んでいる事例を紹介した。同大学では、ブラジルの崩落した土壌において、現地企業と協力し、持続可能な農業技術の開発を進めている。また、在ブラジルの食品企業100社以上と連携し、米国市場への輸出を視野に入れた品質解析やFDA規格(注)への対応支援なども行っている。
さらに、江口学長は、これまでに200人以上の東京農業大学の学生がサンパウロ市を訪れ、現地での研究活動を通じて産学連携の礎を築いてきた歴史にも言及した。こうした継続的な交流が、現在の実践的な連携体制の基盤となっている。同大学は、ブラジルのサンパウロ大学やアマゾニア農業大学との大学間協定を含む、国内外の企業、自治体、教育機関などと148件の包括連携協定を締結しており、ブラジルで、農業×エネルギー、農業×マーケティングなど、分野横断的な研究を推進している。日本を代表する食品メーカーのキユーピーとの共同研究では、カット野菜の保存期間延長に関するプロジェクトが進行中で、学生も積極的に参画している。
醸造分野では、東京農業大学は70年以上の歴史を持つ醸造学科を有し、蔵元の約6割が同大学の卒業生。近年、ブラジルでも日本酒の人気が高まっており、同大学とサンパウロ大学などとの長年の学術交流を背景に、今後は日本酒に関連する共同研究や技術支援などの展開が期待されている。特に、麹菌や発酵技術に関する専門性を生かし、現地での酒造技術の応用や品質向上に向けた協力体制の構築が見込まれている
江口学長は「日伯連携は130年の歴史があり、日系人の皆様の努力の上に現在の関係が築かれている。今後も産学連携を通じて地域社会に貢献していきたい」と語った。
講演後のネットワーキングの様子(ジェトロ撮影)
江口文陽学長の講演(東京農業大学提供)
(注)FDA(Food and Drug Administration)規格は、米国食品医薬品局が定める食品や医薬品、化粧品、医療機器などの安全性や有効性確保するための基準。
(榊原悠生)
(ブラジル)
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