対外貿易法など12の法律・法典の草案・改正案を発表、意見募集を開始
(中国)
北京発
2025年09月19日
中国の北京市で9月12日、第14期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第17回会議が開催され、次の12の法律・法典の草案・改正案が発表されるとともに意見募集が開始された(注1)。各意見募集の締め切りはいずれも10月11日までとなっている。
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対外貿易法(改正案)
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サイバーセキュリティー法(改正案)
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危険化学品安全法(草案二次審議稿)
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生態環境法典 総則編(草案二次審議稿)
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生態環境法典 生態保護編(草案二次審議稿)
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生態環境法典 グリーン・低炭素発展編(草案二次審議稿)
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環境保護税法(改正案)
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国家発展規画法(草案二次審議稿)
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監獄法(改正案二次審議稿)
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民族団結進歩促進法(草案)
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企業破産法(改正案)
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国家通用言語文字法(改正案)
このうち、対外貿易法改正案では、現行法からの変更点として、第1条の本法制定の目的に、国家主権、国家安全、中国の発展の利益を保護するためという文言が追加されたほか、複数の条項において、中国の主権や安全、利益を損なう場合や国際関係上の緊急事態などにおける貿易禁止・制限措置が明文化された。また、政府関係部門は対外貿易関連業務を実施する際、関連の個人・組織から関連情報を収集することができ、関連の個人・組織はこれに協力しなければならないとする文言が追加された。そのほか、加工貿易の定義の明確化、国際基準との適合性向上と国際経済・貿易のルール制定に対する積極的参与、デジタル貿易への支援など幅広い分野にわたって改正が行われている。
また、サイバーセキュリティー法改正案では、違法行為に対する処罰の効力を高めることによる抑止力の向上、事前予防の強化による根源的対策の強調、新興分野に対するセキュリティーの強化に焦点を当てたとしている。
さらに、危険化学品安全法草案二次審議稿では、国が危険化学品の目録管理制度を確立し整備することが明確化されたほか、危険化学品の安全管理の取り組みにおいて総体的国家安全観(注2)を貫徹すること、安全管理の徹底、事故の潜在的リスクの報告に対する奨励、危険化学品の輸送などにおける監督管理の強化などが示された。
なお、環境関連では、生態環境法典の草案と環境保護税法の改正案が示された。生態環境法典は、民法典に次ぐ中国2番目の法典として、4月の第14期全人代常務委員会第15回会議で審議が始まり、編纂が進められている(注3)。主な内容としては、生態環境保護監察制度の明確化、水資源の統合管理、リサイクルの強化、気候変動への対応に向けた制度設計の改善などが示されている。環境保護税法の改正案では、第27条に「課税対象汚染物質および等価値表」で規定されたもの以外の揮発性有機化合物(VOCs)を直接排出する企業などに対し、試行的に環境保護税を徴収することが追加された。
(注1)3月8日に開催された第14期全人代常務委員会第3回会議で2025年の活動計画として、民族団結進歩促進法、国家発展規画法、危険化学品安全法の制定、生態環境法典の編纂(へんさん)、企業破産法、国家通用言語文字法、サイバーセキュリティー法、監獄法、対外貿易法の改正が挙げられていた。
(注2)2014年に、習近平総書記(国家主席)が提唱した概念。政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核、海外での権益、宇宙、深海、極地、バイオ、人工知能(AI)、データなど幅広い分野の安全保障を包含する。
(注3)生態環境法典草案は、総則編、汚染防止編、生態保護編、グリーン・低炭素発展編、法的責任および付則編の全5編で構成されている。
(亀山達也)
(中国)
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