9月の米地区連銀報告、雇用や消費の減速、投入価格の上昇を報告

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月05日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は9月3日、2025年8月の地区連銀経済報告(ベージュブック)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2025年7月8日~8月25日のデータに基づく。全体概況は12地区の大半で「前回からほとんどあるいは全く変化がなかった」とし、前回(経済活動はわずかに増加した)から判断を引き下げた。

分野別では、消費は地区を問わず「多くの世帯で賃金が物価上昇に追い付いていないため、消費支出が横ばいから減少の間で推移している」とした。こうした状況に対し、小売業や娯楽・接客業はセールやプロモーションを提供して需要の下支えを試みたものの、「国内のレジャー需要を下支えしたが、海外からの観光客の需要減を相殺するまでには至らなかった」とし、消費の減速を打ち消すにはやや力不足だったことを指摘した。また、自動車に関しても、売上高は「横ばいからわずかな増加」の範囲にとどまり、そのかわりに自動車修理に係る部品やサービスに対する需要が増加したことが報告されており、買い控えの状態となっていることが示唆されている。

労働市場に関しては、「11地区では雇用水準にほとんどまたは全く変化がなく、1地区では控えめに減少」とし、前回(全体的にごくわずかに増加)から判断を引き下げた。レイオフの増加を報告した地区も2地区(注1)あり、「需要の低迷や先行きの不確実性を嫌い、採用をためらっている」と報告した地区も7地区あった。労働省が発表している7月の求人統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(JOLT)でも2カ月連続で求人数の低下やレイオフの増加が報告されており、これと整合的な報告となっている。また、こうした人員削減のために、特に製造業などにおいて人工知能(AI)・自動化への投資が増加していることも報告されている。他方で、移民労働力の減少によって建設業などで影響が出始めているとする報告(注2)や、熟練労働者の不足は依然として続いているとする報告(注3)もみられ、労働需給のミスマッチも同時に拡大している様子が示唆されている。

価格については、10地区で緩やかから控えめの間で上昇、2地区(注4)でこれを上回る強いペースで投入価格(コスト)が上昇しているとした。こうした投入価格の上昇にもかかわらず、(1)顧客が価格上昇に敏感になっていること、(2)取引機会の喪失を懸念していること、(3)これらを受けて価格決定力が低下していること、から一部ではむしろ値下げ圧力も発生しており、値上げにちゅうちょしていると報告されている。今後の見通しについては、大半の地区は今後数カ月間価格上昇が続くとともに、一部の地区は価格上昇ペースがさらに加速すると予想している。

(注1)フィラデルフィア連銀、サンフランシスコ連銀。

(注2)ニューヨーク連銀、リッチモンド連銀、セントルイス連銀、サンフランシスコ連銀。

(注3)フィラデルフィア連銀、シカゴ連銀、ミネアポリス連銀。

(注4)ニューヨーク連銀、カンザスシティー連銀。

(加藤翔一)

(米国)

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