欧州委、EU競争法違反として米グーグルに29.5億ユーロの罰金
(EU、米国)
調査部欧州課
2025年09月12日
欧州委員会は、米国グーグルがオンライン広告技術(Adtech)市場で支配的地位を乱用し、EUの競争法に当たる「EUの機能に関する条約(TFEU)」第102条と欧州経済領域(EEA)協定第54条の違反に該当するとして、29億5,000万ユーロの罰金を科した(9月5日付プレスリリース)。
グーグルは自社の広告交換サービス「AdX」について、広告配信サーバー「DFP」や広告購入ツール「Google Ads」「DV360」を通じて不当に優遇し、競合他社を排除したとしている。
具体的には、競合の最高入札額を事前にAdXに知らせ、常に競り勝てるように操作していた。Google Adsは他の広告交換所への入札を避け、自社のAdX中心に広告を流すことで、広告主や出版社の選択肢を狭め、AdXの市場支配力を強化。結果として、広告主のコスト増や、ウェブサイトやアプリなどのコンテンツを提供・運営するパブリッシャーの収入減、消費者への負担やサービス品質の低下を招いたとしている。
欧州委はグーグルに対し、自社優先的な慣行の停止と広告技術サプライチェーンにおける固有の利益相反(注1)の解消を命じ、60日以内に是正措置を提出するよう要求し、内容が不十分な場合は事業の一部売却など構造的な是正措置も検討するとしている。グーグルは過去にも、2017年に各オンラインショップの商品を比較する「Shopping Service」の優遇による24億2,000万ユーロの罰金、2018年にアンドロイドOSを搭載したスマートフォンやタブレットなどに自社アプリを強制的にプリインストールすることによる43億4,000万ユーロの罰金、2019年にウェブサイトやブログに広告を貼って収益を得られる仕組みの「AdSense」契約での競合広告の掲載禁止などによる14億9,000万ユーロの罰金と、3件の違反が認定されている。
なお、今回のグーグルに対する違反の認定と制裁は2022年に施行されたデジタル市場法(DMA、2025年3月28日記事参照)によるものではなく、従来のEUの競争関連法によるものだ。
また、EUの競争法違反は、米国のマイクロソフトや半導体大手インテルに対しても、過去に認定されている(注2)。
(注1)グーグルのビジネスモデルは、次のとおり、広告の流通に関わる「買い手」「売り手」「仲介者」の役割を全て1社で担って自社の利益を最大化するもので、他社の市場参入を排除する可能性がある。
- 広告主向けツール(広告の買い手)Google Ads、DV360など
- 広告配信サーバー(広告枠の売り手):DFP(Google Ad Manager)
- 広告交換所(仲介者):Google AdX
(注2)EUは、マイクロソフトには2004年にウィンドウズのパソコンに音楽再生アプリMedia Playerをパッケージ販売したことによる4億9,700万ユーロの罰金を科したほか、2009年にデフォルトのブラウザをInternet Explorerとしたことによる改善命令を出した。インテルには2009年、パソコンメーカーへのリベート(払い戻し)によって競合を排除したとして、10億6,000万ユーロの罰金を科した。
(坂本裕司)
(EU、米国)
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