ドイツでの2024年の会社設立件数、前年比で減少
(ドイツ)
ミュンヘン発
2025年09月09日
ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)は9月4日、ドイツでの2024年の会社設立件数や会社設立動向に関するレポートを公開した。このレポートは、ZEWと企業信用調査会社クレジットリフォーム(Creditreform)のドイツ国内の企業情報データベース「マンハイマー企業パネル(MUP)」に基づいており、零細企業や自営業者も含んでいる。
同レポートによると、2024年の会社設立件数は前年比0.2%減の約16万1,000件だった。2015~2021年の平均設立件数16万8,000件を大きく下回っている。レポートによると、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰や、世界秩序の不安定化がドイツ経済に悪影響を与えていることが設立数の減少の要因となっている。加えて、(1)中国企業との競争激化、(2)官公庁と財務システムのデジタル化の遅れ、(3)官僚主義、(4)人手不足など、ドイツが抱える構造的な問題も会社設立の妨げとなっている、とした。また、インフレ率上昇による消費支出の減退や、賃金上昇の会社経営圧迫も設立件数に影響し、これらの複数の要因に伴う投資の低迷はイノベーションも阻害するという。
ドイツでの2024年の会社設立件数を産業別(添付資料図参照)にみると、特に研究開発への投資額が多い(売上高の少なくとも2.5%)製造業の設立件数が前年比20.8%減と大きく減少した。その他の製造業と建設業の会社設立件数もそれぞれ16.8%、12.7%減少している。高いエネルギーコストや材料費の高騰などがその要因だ。美容室や清掃業、葬祭業などを含む個人向けサービス業は新型コロナウイルス危機から低下傾向にあり、件数が約9,000件と14.6%減少した。一方、不動産と住宅業関連は好調で、30.4%と増加した。
ZWEによると、特に情報通信技術(ICT)関連の会社設立は増加傾向に転じると期待されている。2016~2021年は人工知能(AI)技術の拡大が新たな経済的な刺激をもたらした。他方、過去数年増加していたソフトウエア関連分野では、2024年にマイナスに転じた。ZEWのサンドラ・ゴットシャルク博士はその動向について「デジタル関連技術の重要性が増しているものの、景気低迷の影響を免れない」とコメントした。
(クラウディア・トーディ)
(ドイツ)
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