工業省、国産化率(TKDN)新規則を公布、12月11日施行へ

(インドネシア)

ジャカルタ発

2025年09月24日

インドネシア工業省は9月11日、国産化率(TKDN)制度の大幅な見直し規定となる工業大臣規則2025年第35号を公布した(9月13日付工業省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。本規則は2011年以来の旧規則を置き換えるもので、公布から3カ月後の2025年12月11日に発効する予定だ。工業省は今回の改正を「TKDN政策の改革」と位置づけ、手続きの簡素化・迅速化とインセンティブ導入による産業競争力強化を目指す。従来制度で指摘されてきた高い認証コストや有効期間の短さといった課題を踏まえ、透明性と実効性の向上が図られる(「コンタン」9月12日)。

制度変更点は多岐にわたる。まず、TKDN値の算定方式が簡素化され、従来は製造コスト全体を精緻に計算する必要があったのに対し、新制度では原則として一次部材のみを対象とし、部材にTKDN認証がない場合は原産地情報に基づいて算定する方式に改められた。認証審査も迅速化され、通常認証は従来の22営業日から10営業日へ、中小企業向け申請は5営業日から3営業日に短縮される。TKDN認証の有効期間は従来の3年間から5年間に延長され、企業はより長期的な計画を立てやすくなる見込みだ。

新しく導入されたインセンティブ制度も注目される。国内製造業への新規投資を行う企業には、TKDN値に一律25%相当の加点が自動付与される。さらに、インドネシア国内で研究開発(R&D)活動を行った企業には最大20%のTKDN加点が与えられる。また、企業貢献比重(BMP)(注)の算定方法も見直され、最大15%のBMP値を得るための要件が緩和されている。例えば、複数の評価項目から有利な条件を選択できる仕組みにすることで、企業がBMPポイントを獲得しやすくなった。

さらに、工業省は監察局傘下に監視チームを新設し、虚偽申告によるTKDN値の水増しなど違反行為の摘発にあたるなど、監督・罰則体制も強化した(「コンタン」9月12日)。なお、製品への「TKDNマーク」表示については、企業の判断に委ねる任意措置としている。

インドネシア商工会議所(KADIN)経済部門の産業担当副部長サレー・フシン氏は「認証申請プロセスの迅速化、事務手数料の軽減、認証有効期間の5年への延長は、企業に確実性をもたらし、事務負担を減らすものだ」と歓迎した。一方、新たなインセンティブ措置の恩恵は大企業に偏りやすく、十分な支援がなければ中小企業が取り残される懸念があると指摘している(「ビスニス」9月16日)。実際、追加のTKDN加点を享受するには相応の投資余力が必要で、資金力の乏しい中小企業ほど不利になる可能性がある。

(注)企業貢献比重(BMP)とは、インドネシアで投資・生産を行い、国内経済に利益をもたらした企業の評価値を指す。

(八木沼洋文)

(インドネシア)

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