NEC、グローバル事業DGDFの本社機能を東京からチューリヒに移転

(スイス、日本)

ジュネーブ発

2025年09月12日

NECは8月にデジタルガバメント・デジタルファイナンス(DGDF)事業の本社機能を東京からスイスのチューリヒに移転した。スイスに設立したNEC DGDF Headquarters AGがDGDFビジネスユニットの本社機能として、デジタルID/DXを含めたグローバルなDGDF事業全体の運営を担う。特にM&Aを含む重要な戦略の立案と推進、主管子会社・連結事業の経営管理、幹部人事・報酬管理を行う。ジェトロは9月4日、同社の井上修一最高財務責任者(CFO)と生田誠戦略担当部長(VP)に、DGDF統括機能のチューリヒへの移転について話を聞いた。

井上CFOによると、NECは、(1)DGDF、(2)パブリック、(3)エンタープライズ、(4)テレコムサービス、(5)エアロスペース・ナショナルセキュリティーの5つのビジネスユニットのほか、(6)デジタルデリバリーサービス、(7)デジタルプラットフォームサービス、(8)グローバルイノベーションの3つの横断的なビジネスユニットと、(9)コーポレートを担う組織で構成されるが、そのうちの1つDGDFビジネスユニットの本社機能を8月に東京からチューリヒに移転した。NECは2016年にグローバルセーフティ部門(現デジタルID/DX)を再編し、2018年1月に英国のNorthgate Public Services〔現Software Solutions UK(SWS-UK)〕、2019年2月にデンマークのKMD、2020年12月にはスイスのアバロック(Avaloq)を買収するなどして、事業領域を警察・国民ID・空港などのパブリックセーフティーから、デジタルガバメント、デジタルファイナンスへと拡大してきた。特にデジタルファイナンス事業を担当するアバロックが成長を牽引しており、買収したSWS-UK、KMD、アバロックの3社で売上高の約8割を占める。さらにデジタルID/DXなどを含めると、売上高は3,000億円を超える規模で推移している。今回、DGDFビジネスユニット長を務める久保知樹・執行役Corporate EVP を責任者とし、DGDFの本社機能をチューリヒに移転することにより、欧州3社および欧州市場との距離を縮め、意思決定の迅速化により成長戦略を加速することが狙いだという。

なお、今回の移転にあたっては、主要子会社が属する複数の国を検討したが、最終的に、欧州大陸の中心に位置し、成長を牽引するデジタルファイナンス事業の拠点スイスを選択した。スイスへの移転手続きは、スイスの貿易投資振興機関スイス・ビジネス・ハブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます・ジャパンや在日スイス大使館、加えて、チューリヒ州からの支援もあり、円滑だったとしている。

井上CFOはDGDF統括機能を日本からスイスに移したもう1つの目的として、真のグローバルマネジメントモデルの確立を挙げる。DGDFが先頭に立って、グローバルオペレーションモデルを確立させ、人材の適時適所適材化(注)を進めていくことを目指している。

写真 NEC DGDF Headquarters外観(NEC提供)

NEC DGDF Headquarters外観(NEC提供)

(注)戦略起点で適切なタイミングでその実行に必要な組織・ジョブを明確化した上で、最適な人材を登用するという同社の戦略。

(田中晋)

(スイス、日本)

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