中国、新たな都市戦略となる「都市の高品質発展の推進に関する意見」発表

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年09月09日

中国共産党と国務院は828日、「都市の高品質発展の推進に関する意見」(文書は815日付)を発表した。

この意見では、中国で都市化は急成長期から安定成長期へと移行しており、都市の発展はこれまでの量的拡張から質的向上へと転換する必要があると指摘し、都市を「現代化建設の重要な担い手」「人民の幸福な生活空間」と位置づけて、都市の高品質発展を国家戦略として推進するとした。主要目標として、2030年までに都市の高品質発展に対応した政策・制度を着実に整備し、都市構造の最適化、居住の質の向上、グリーンで安全かつ文化的な魅力が備わる現代化人民都市の建設を大きく進展させることや、2035年には基本的にこれらを完成させることを示した。

この発表に先立つ71415日には、習近平国家主席、李強首相をはじめ、7人の政治局常務委員が全員出席し、約10年ぶりに「中央都市工作会議」が開催された。10年前の会議内容と比較すると、都市の役割は2015年が「成長のエンジン」との位置づけだったのに対し、現在は「国民生活の空間・幸福の基盤」へと変化している(「sinaネット」717日)。政策課題も、2015年は渋滞や汚染、住宅不足などの「都市病への対応」だったのに対し、現在は「質の高い成長の促進、既存資源の価値と効果の向上、安全性確保の徹底」へと変わり、都市政策や経済政策で新規開発よりも、既存資源の利活用と安全性がより重視されるようになった。

今回の意見でも、都市の質的発展の重要性を繰り返し強調している。京津冀(北京・天津・河北地域)、長江デルタ地域、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア地域)など、地域間の連携強化と都市機能の統合をより一層進めるほか、都市化建設では特に県レベルの都市を重要な担い手と位置づけ、地域特性に応じたインフラ整備や公共サービスの充実を段階的に進める方針を示したことは注目される。

また、従来の不動産開発のやり方から脱却し、持続可能で安定した不動産業の新しい発展モデルの構築を急速に進めることも示した。高層マンション建設の制限や、上下水道などの老朽化した配管の改修を急ぐほか、(1)生態系にやさしく、グリーンで低炭素な都市の建設、(2)災害に強く、防災機能を備えたレジリエンスが強化された都市の建設、(3)交通、医療、行政サービス、エネルギー管理などの分野でデジタルテクノロジーの活用などを通じて、都市や住民生活の質を向上させるとした。

意見では最後に、地方を含めた政府幹部に対して、「科学的で正しい政績観(政治業績の基準に関する観点)の確立」や、形式主義と官僚主義の排除、実務重視を求め、実効性のある政策実施を強く求めた。

(清水顕司)

(中国)

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