世界的なエネルギー展示会「ガステック」がミラノで開催、今後のエネルギー動向把握に関心
(イタリア)
ミラノ発
2025年09月26日
天然ガスや液化天然ガス(LNG)などのエネルギー分野の世界的な展示会「ガステック」が9月9~12日にミラノで開催された。この展示会は毎年、世界の異なる都市で開催され、ミラノでは2022年に続く3年ぶりとなった。約1,000社が出展し、150カ国以上から過去最多の4万8,000人以上が来場し、エネルギー大手企業幹部や欧州、アフリカ、中東の閣僚など25人も参加した。
初日の開会式では、欧州委員会エネルギー総局長のディッテ・ユール・ヨルゲンセン氏や、米国内務省のダグ・バーガム長官が基調講演を行った。また、ガステックとしては初めて閣僚級のパネルディスカッションも行われた。新たなLNG市場の台頭や、欧州のエネルギー安全保障の強化、天然ガスの持続的成長基盤としての活用などに焦点を当てながら、エネルギー供給の多様化や国際協力、強靭(きょうじん)なインフラが包括的、かつバランスの取れた移行に果たす役割について議論がなされた。
イタリアからは、ジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相が登壇し、同国政府は次世代原子力発電のようなクリーンで安全性の高い技術への取り組みを進めると同時に、ガス供給の強化とLNGをガスに戻す再ガス化能力の増強を推進していることを強調した。既存設備の最適化に加え、港湾都市ピオンビーノとラベンナで新しいFSRU(浮体式再ガス化設備)がそれぞれ2023年と2025年に稼働し、再ガス化能力は280億立方メートルに拡大するとした。水素分野でも、イタリアの立地は国内・欧州のみならず、国際市場でも地中海とアフリカをつなぐ重要な役割を持つと述べた。イタリア、オーストリア、ドイツ、アルジェリア、チュニジアの5カ国で2025年1月に署名した水素専用パイプライン「SoutH2回廊」プロジェクト(2024年5月31日記事参照)について、同相は「持続可能な地域のバリューチェーンを構築することで産業の脱炭素化を目指す模範的な協力事例」として、国を越えた連携の重要性を強調した。
会期中には、イタリアのエネルギー大手エジソンがシェル関連企業との契約締結を発表した。2028年以降、米国から年間約70万トンのLNGを最長15年間で調達する。
展示会のガステックの様子(ジェトロ撮影)
同展示会に約20社の日系企業も出展するとともに、日本人来場者も各地から参加した。展示会では天然ガスやLNGだけでなく、水素、気候変動、人工知能(AI)などの関連技術エリアが設けられた。日本の出展者や来場者の中には、欧州や世界での水素やガスの今後の動向把握を参加目的とする人もいた。また、ジェトロがコンタクトした複数の外国企業は日本企業の関連技術に関心を示していた。
(山本千菜美、古川祐、石倉傑)
(イタリア)
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