アグリテック系スタートアップ、オーストラリアの農場・生産施設と足がかり構築

(オーストラリア)

シドニー発

2025年09月29日

ジェトロは9月1~10日、アグリテックに特化したアクセラレ-ションプログラムとして、オセアニア地域初となる「Global Growth for AgriTech」の現地視察をオーストラリアのメルボルンとシドニーで実施した。同国は世界第6位の国土を有し、独自の生態系を持つことから、バイオセキュリティーの意識が高い一方で、大規模な農業や畜産業を効率的に営むための技術や研究を進めるアグリテックにも強い関心を示している。今回のプログラムは、メルボルンに拠点を置くアルティジアン・ベンチャーの子会社で、主に人工知能(AI)スタートアップへの投資・支援を行っているBoabによるオンラインでのメンタリングを中心とした研修を経て実施した。

プログラムには、ジェトロが採択したアグリテック系スタートアップ7社が参加し、現地の大学・研究機関や農場、生産施設との協業や投資による連携可能性を探った。さらに、オーストラリア国内での実証データ取得を通じた市場戦略の道筋を構築した。参加した7社は次のとおり。

  • EF Polymer外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:食物の残りかすをアップサイクルした100%オーガニックの高吸水性ポリマーを製造
  • CULTA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:非遺伝子組み換えの高速育種技術による次世代品種を研究開発
  • サグリ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:衛星データやAI、土地マッピングツールを組み合わせた農地管理でカーボンクレジットも実現
  • サンシキ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:海藻由来の飼料添加物で家畜のメタン排出量を削減
  • 輝翠TECH外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:自立走行AIロボットによって屋外農作業労働を軽減
  • cuonrop外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:視覚化した食品エコ指標で企業のサステナビリティー測定や改善を支援
  • Green Carbon外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:衛星とAIを活用して自然由来の大規模カーボンクレジット販売事業を展開

メルボルンで開催したデモデーには、各社が50人の関係者を前にピッチを行った。La Trobe大学にある世界有数の研究施設AgriBioを訪問し、検疫~育成~計測~解析~実証~市場検証を一本化した産学連携の取り組みを視察した。メルボルン大学との意見交換では、いかに積極的なコラボレーションが生み出されるかを議論した。また、Agriculture Victoriaの運営する先進的な研究施設Tatura Smart Farmへの訪問に加え、農家では慢性的な労働力不足や、自然災害による被害や水や肥料の価格高騰など、現場の課題とニーズとの合致を確認した。

シドニーでは、西シドニー大学のホークスベリーキャンパスにあるAgri Tech Precinctを訪れ、施設栽培や食料生産の改善などの研究現場を視察した。

プログラム中は、現地大手企業や政府系機関などとの面談も行った。参加企業からは、「オーストラリアの大学や研究機関と面談を実施し、一定の関心を寄せられた」「(米国関税措置の影響など今後の政策変更を視野に)米国の状況によっては、オーストラリアでの展開が早まる可能性がありそう」「今回得たつながりをさらにつなげたい」といった声が寄せられた。

写真 AgriBio(左)Tatua Smart Farm(右)での視察(ともにジェトロ撮影)

AgriBio(左)Tatua Smart Farm(右)での視察(ともにジェトロ撮影)

写真 メルボルンでのデモデー(ジェトロ撮影)

メルボルンでのデモデー(ジェトロ撮影)

(注)同プログラムは、ジェトロと経済産業省が主催する起業家育成プログラム「J-Star X」の一環。

(伊東佐和子、鈴木七海)

(オーストラリア)

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