タイ商務省、中国製品の流入リスクに警鐘
(タイ、中国、米国)
バンコク発
2025年09月24日
タイ商務省は9月8日、「貿易転換の分析:中国製品のタイへの流入、米国の相互関税導入後」と題する調査報告書を発表した。同報告書では、独自の輸入警戒システムを構築し、中国製品の流入リスクが高い製品群を特定。原産地偽装防止や国産ブランドの推進の必要性を強調している。
調査分析は、商務省内の貿易政策・戦略事務局(TPSO)が実施した。米国相互関税の税率・コスト差や地理的・マクロ経済要因などを踏まえつつ、中国からの輸入品に対して、警戒度を測定した。
測定の尺度として、2024年における中国製品の市場シェア、同4~12月の輸入増減、製品価格差(国内製品と中国製品、世界平均の価格差など)からリスクの高低を分析している。
分析の結果、中国から輸入された1,149品目〔関税分類(HS)4桁ベース〕のうち、24品目が高リスク、17品目が高リスク(候補)、166品目が監視対象、38品目が監視対象(候補)、904品目が低リスクと特定した。TPSOは、高リスク・監視対象(候補)品目は、工業製品や資本財が多いとして、非鉄金属製品や化学品、機械設備や工具などを具体的に挙げている(添付資料表参照)。
中国製品のタイへの流入の要因として、米国の相互関税の税率差が中国(34%)とタイ(19%)で15ポイントの差があること、中国の生産過剰および補助金による生産コストの低下などを指摘。さらに、ASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)により中国製品の流入が一層容易になっているとしている。
またTPSOは、タイは原材料・完成品の両面で中国への依存度が高く、貿易赤字が継続していると説明した。過剰な製品流入は製造業、特に中小企業の価格競争に影響を与え、生産能力の低下、雇用喪失を招く恐れがあると懸念を示した。
分析結果を踏まえ、TPSOは政策提言として次の3つを柱に挙げている。
- 貿易規制の厳格な執行と電子商取引の監督強化:原産地偽装防止(ダンピング防止・相殺関税措置、製品基準、衛生・植物検疫措置)を含む
- 貿易政策と産業政策の統合による長期的なレジリエンス(強靭性)の構築、「Made in Thailand」ブランドの促進
- ASEANにおけるアジェンダの推進やACFTAの高度化を含む地域協力と積極的外交
(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、中国、米国)
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