中国、メキシコに対し貿易投資障壁調査を開始
(中国、メキシコ、米国)
北京発
2025年09月29日
中国商務部は9月25日、商務部公告2025年第53号で、メキシコに対する貿易投資障壁調査を開始すると発表した。商務部は当該措置について、メキシコ政府が中国など非自由貿易協定パートナー国からの輸入品に対し関税の引き上げを検討していることを理由としている。
調査対象はメキシコ政府が関税引き上げの検討対象としている製品(注1)としているが、メキシコが近年、中国に対して実施したその他の貿易投資に係る制限措置も本調査の対象としている。調査は対外貿易障壁調査規則にのっとり、商務部が利害関係者に対しアンケートやヒアリング、実地調査などを実施するとしている。調査期間は6カ月間とし、特殊事情により最長3カ月の延長が可能としている(注2)。
商務部の報道官は、現在、米国が関税を乱用する状況下において、各国はさまざまな形態の単独主義や保護主義に対し共に反対すべきであり、他者の脅迫によって第三者の利益を犠牲にしてはならないと説明した。また、メキシコの一方的な関税引き上げ措置が実施されれば、中国を含む貿易相手国の利益を損なうだけではなく、メキシコのビジネス環境の確実性に深刻な影響を与え、企業によるメキシコへの投資意欲を低下させるものであり、中国はこれに断固として反対するとした。
メキシコと米国原産のペカンナッツに対するAD調査を開始
中国商務部は9月25日、商務部公告2025年第52号で、メキシコおよび米国原産のペカンナッツ(注3)の輸入に対し、アンチダンピング(AD)調査を開始すると発表した。これは、アンチダンピング条例の第18条に基づき、特殊な状況下、商務部がアンチダンピング調査の申請を受領していない場合においても、ダンピングと損害、およびその両方の因果関係が存在することを示す十分な証拠がある場合、調査開始を決定できることによるものとしている。調査は即日開始し、2026年9月25日までに終了する予定で、特殊な状況となった場合は、さらに6カ月の延長を可能としている(注4)。
商務部は、メキシコおよび米国原産のペカンナッツが、正常価格を下回る価格で中国に輸出されており、ダンピングが行われていること、また、当該製品の中国市場への流入量が大幅に増加し価格が下降傾向を示しており、中国国内産業は実質的な損害を被っていることを指摘している。
(注1)中国商務部の発表では、具体的には自動車およびその部品、繊維品、衣類、プラスチック、鉄鋼、家電製品、アルミニウム、玩具、家具、靴、皮革製品、紙・段ボール、二輪車、ガラスが挙げられている。
(注2)利害関係者は、本公告に対する意見を本公告発表日から20日以内に書面で商務部貿易救済調査局に提出ができる。また、利害関係者は本調査に関する意見や回答などを「貿易救済調査情報化プラットフォーム」において電子版で提出ができる。
(注3)商務部の発表では、英文名称はCarya illinoensis、中国輸出入税則に基づく税則番号08029990が調査対象となっている。
(注4)ダンピング調査対象期間は2024年1月1日から12月31日まで、国内産業の損害調査対象期間は2022年1月1日から2024年12月31日までとしている。調査方法はアンケート、サンプリング調査、ヒアリング、実地調査などとしている。
(亀山達也)
(中国、メキシコ、米国)
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