アラゴン州で投資セミナー・交流会を日本大使館が開催、2年で579億ユーロの投資計画、再エネの有望地域

(スペイン、日本)

マドリード発

2025年09月24日

在スペイン日本大使館は9月18日、スペインのアラゴン州政府と同州の貿易投資促進機関「アラゴン州振興公社(AREX)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」による投資セミナーを含む、日系企業商工会と現地政府機関や企業との交流イベントを開催した。アラゴン州側からは、ホルヘ・アスコン州首相、マル・バケーロ副首相(経済長官などを兼務)、戦略的投資や産業振興・イノベーション、観光担当の局長、AREX、経営者団体、各種クラスターの代表者など、幅広いキーパーソンが参加した。中前隆博・駐スペイン日本大使は冒頭、「物流やテクノロジーのハブとしての重要性が高まる同州と日本企業とのビジネス交流が活発化することを期待する」とあいさつした。

スペイン北東部に位置するアラゴン州は、マドリード、バルセロナ、バスク地方の中間にある内陸地域だ。その立地から、イベリア半島とフランス以北を結ぶ一大物流拠点となり、ステランティス工場を中心とする自動車クラスターも集積する。州面積は国土総面積の10%を占める一方で、人口は国全体の3%だが、エネルギー移行とデジタル化の中で国際的に注目されている。

同州最大の強みは、水資源や風力・太陽光エネルギーの豊富さ、そして土地の広さだ。2024年の発電電力量に占める再生可能エネルギー比率は89%と、国内平均(56.8%)を大幅に上回り、電力の半分以上が輸出された。この潜在性に着目した投資が相次いでいる。

過去2年に発表されたテクノロジー分野での投資案件の総額は579億ユーロに達した。その代表格がデータセンター投資計画だ。157億ユーロを投じるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)をはじめ、マイクロソフトや投資会社ブラックストーンのデータセンター運営会社などによる数十億ユーロ単位の投資予定が報じられている。バッテリー分野では、2024年12月にステランティスが中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)と合弁で、サラゴサにリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)電池工場を建設すると発表。グリーン水素分野でも、国内のEU復興基金プロジェクト14件中4件が同州で計画されている。日系企業では、日立エナジーが2025年1月、同州のサラゴサ工場において、系統接続やデータセンター給電の鍵となる変圧器の生産能力増強を発表した。

アスコン州首相は「年中無休で投資企業のニーズに応えることにより、重要プロジェクトの許認可を最短9カ月で実現できる」と強調した。州政府関係者によると、「同州は豊富で安価なエネルギーを生かした製造業にも最適だ。州内企業との提携なども期待されている」という。

写真 アラゴン州のホルヘ・アスコン州首相による講演(ジェトロ撮影)

アラゴン州のホルヘ・アスコン州首相による講演(ジェトロ撮影)

(伊藤裕規子)

(スペイン、日本)

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