ブラジルでライセンスビジネス展、日本発IPが存在感を示す
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年09月12日
ブラジルで8月27~28日、サンパウロ市内の展示会場ビラ・ドス・イペースにおいて、中南米最大級のライセンスビジネス展示会「Licensing Con Latam 2025」が開催された(注1)。3,000人以上が来場した。
「Licensing Con Latam 2025」展示会場の様子(ジェトロ撮影)
ジェトロは今回、Japan Streetブースを初めて出展し、日本発IP(注2)を紹介する場として活用した。ジェトロブースに出展した企業は、それぞれ自社のIPを通じて、南米市場におけるビジネス展開を目指し、現地バイヤーとの人脈形成や商談機会を積極的に創出した。
一部商談では、アニメ作品の南米地域での放送権や配信権のライセンス契約のほか、キャラクターを活用した商品化ライセンス(グッズ展開やプロモーション利用など)についての提案が行われた。また、IPのブランド展開や現地企業とのコラボレーションの可能性についても協議が進められ、各社は南米市場での新たな展開に向けた足がかりを築いた。
〇ジェトロブースで紹介された日本企業と代表作品一覧
- トムス・エンタテインメント:「ルパン三世」「それいけ!アンパンマン」「範馬刃牙」
- Remow LATAM:「桃源暗鬼」「Minto Friends」
- Mint:「うさぎゅーん」
- 丸紅ブラジル(Marubeni Brasil S.A.):「エヴァンゲリオン」
- 日本アニメーション:「ちびまる子ちゃん」「タイムボカン24」「コジコジ」
- 読売テレビ放送:「べるぜバブ」
Japan Streetブースの様子(ジェトロ撮影)
また、アニメ業界を代表する企業であるアニプレックスおよびトムス・エンタテインメントは、それぞれ個別ブースを初出展した(注3)。アニプレックスは、現地でのブランド認知度確認を目的としており、来場者の関心度合いの高さから、今後の継続的な展開に向けた手応えを得たという。現地のバイヤーや業界関係者から直接フィードバックを得ることができ、特にアニメIP(注4)に対する関心の高さを実感した。トムス・エンタテインメントのブースでは、現地パートナーとの具体的な商談にもつながる動きがあり、担当者からは「まずは現地に足を運び、肌で市場の熱量を感じることが重要だった」との声が聞かれた。両社ともに、今回の出展を通じて南米市場の可能性を実感し、今後の継続的な出展を前向きに検討している。
サンリオは、前回に続きジェトロブースに出展した。南米での事業展開が順調に進んでいることを背景に、現地バイヤーとの対話を通じて、現在の事業方針の妥当性を確認することが目的だった。2025年の「Prêmio LicensingCon Latam 2025」(注5)では、「ハローキティ」が最優秀賞を受賞した。「ハローキティ」の受賞により、展示会の会期中にはサンリオ宛てに問い合わせが殺到したという。担当者が対応しきれないほどの反響があり、今後は本展示会に出展したことによる問い合わせ内容を精査し、事業展開に生かしていく方針だ。
今回の展示会では、日本以外の個別国によるパビリオン設置は確認されなかったが、各企業が展示会で紹介したライセンス対象のIP(知的財産)には「ハリー・ポッター」(英国)、「アイルトン・セナ」(ブラジル)、「僕のヒーローアカデミア」(日本)などの作品が含まれており、南米市場における多様なコンテンツ需要の広がりがうかがえた(注6)。
(注1)本展示会は、アニメ、映画、ゲーム、出版、アパレル、食品、化粧品など多様な業界のブランドキャラクターIP(キャラクターに関連する知的財産権)を対象としたBtoBイベントであり、主催はブラジル・サンパウロに本社を置くマーケティング・イベント企画会社のEPグループ。出展企業には、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、パラマウント、ユニバーサル・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・カンパニー、BBCスタジオなど、ブランドキャラクターで世界的に知名度の高い企業や現地で特に知名度の高いグローボなど48社がそろい、南米市場におけるライセンスビジネスの可能性を探った。
(注2)日本で企画・制作されたアニメやキャラクターなどの知的財産。
(注3)アニプレックスは、ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のアニメ制作・配信会社で、「鬼滅の刃」「鋼の錬金術師」など、世界的に人気の高い作品を多数手がけている。トムス・エンタテインメントは、1964年創業の老舗アニメ制作会社で、「ルパン三世」「それいけ!アンパンマン」「範馬刃牙」など、幅広い世代に親しまれている作品を多数制作している。
(注4)アニメ作品に関連する知的財産権。具体的には、キャラクター、映像、ロゴ、商品化権、配信権などが含まれる。
(注5)ラテンアメリカ最大級のライセンス関連展示会「LicensingCon Latam」内で開催される表彰制度で、EPグループが主催し、ブラジル国内外のライセンス市場において革新性や影響力のあるブランドキャラクターを表彰するもの。選考は、業界専門家による審査委員会によって行われ、2025年は130件以上の応募があった。
(注6)ブラジルでの日本アニメ人気についての詳細は、調査レポート『アニメ関連サービス・商品に関するブラジル市場レポート(2025年3月)』を参照。
(榊原悠生)
(ブラジル)
ビジネス短信 7591bf57f8508ee5