米メキシコ間の高官協議相次ぐ、不法移民や違法薬物対策、USMCAが主要議題に
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2025年09月05日
米国のマルコ・ルビオ国務長官は9月3日、メキシコを訪問し、同国のクラウディア・シェインバウム大統領と会談した。同日の国務省報道官の発表によれば、両者は強固なパートナーシップを再確認するとともに、麻薬組織の解体、フェンタニルのまん延や国際犯罪組織による暴力への対処、不法移民の終結、経済の繁栄と安全保障の促進に向けた両国の連携を再確認した。また、同日に発表された両国政府の共同声明
では、これら安全保障分野の問題に関して、両国の取り組みを定期的にフォローアップするためのハイレベルな協議体を設置したことも記載された。
国務省報道官の発表や両国の共同声明では、米国の関税措置に関する言及はなかった。米国は2025年3月から不法移民や違法薬物の流入対策を目的に、メキシコ原産品に対して25%の追加関税を課している(2025年3月4日記事参照)。ただし、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす場合には、追加関税は適用されない(2025年3月7日記事参照)。米国のドナルド・トランプ大統領は、メキシコ原産品に対する追加関税率を30%に引き上げる意向を示していたが、両国首脳は引き上げを8月1日から90日間延期することで合意している(2025年8月1日記事参照)。
なお、米国メディアによれば、米国連邦議会下院で通商を所管する歳入委員会の所属議員が9月3日、首都ワシントンでメキシコのマルセロ・エブラル経済相と、USMCAを議題に会合を開催したもようだ(通商専門誌「インサイドUSトレード」9月4日)。USMCAは協定発効16年目(2036年7月)に失効する。ただし、協定発効6年目(2026年7月)に協定の見直しを実施し、3カ国が延長に合意した場合、16年後(2042年7月)まで延長される。3カ国のいずれかが延長に合意しない場合には、以降毎年、見直しを実施することが規定され、延長を検討することになっている(協定第34.7条)。
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は2025年8月に、USMCAの見直しプロセスを考察する報告書を発表した。同報告書では、トランプ政権が長年の貿易相手国であるメキシコやカナダに対しても追加関税を賦課し、製造業の米国内回帰を追求していることなどを踏まえ、2026年7月の見直しで協定の単純な延長に合意することを「現時点で最も可能性の低い結末」と解説している。3カ国で主要な規定の改正に向けた交渉が行われると予測し、特恵関税の適用を受けるための自動車の域内原産割合(RVC、現在75%)の引き上げや米国原産材料の最低含有基準の設定など原産地規則の強化、中国を念頭においた対内投資審査メカニズムの創設など対中政策の3カ国間での連携などが交渉の焦点になるとの見方を示した。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ、カナダ)
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