行政長官の施政報告、知的財産権取引の保護強化に向けた取り組みを発表
(香港)
香港発
2025年09月19日
香港特別行政区(以下、香港)政府の李家超(ジョン・リー)行政長官は9月17日、施政報告(施政方針演説、以下、報告)を行った。報告の中で、知的財産(IP)に関しては、「地域の知的財産権取引センター」と題する項目を設けた上で、次の5つに分けて具体的な取り組みを挙げている。
(1)IP取引の保護:IP融資、評価、保護に関する施策を推進し、外部へのプロモーションを強化してIP取引を促進する。
(2)IP融資の強化:商務・経済発展局(CEDB)と知識産権署(IPD)は香港金融管理局(HKMA)と連携し、銀行、保険、評価、法律その他の専門職の支援のもと、パイロット業種(特に技術セクター)がIPを活用した資金調達を行うためのIP融資サンドボックス制度(注1)を立ち上げる。
(3)専利評価サービスと補助金:香港テクノロジー・イノベーション支援センターを2025年末に正式稼働させた後に、香港政府は、同センターが香港域内基準に基づく専利(注2)評価を地元中小IT企業に対して提供することを支援し、信用融資の参考資料としての専利評価を補助する2年間のパイロットプログラムを開始する。
(4)IPの保護:2024年9月に実施した人工知能(AI)の技術発展に応じた保護に関する著作権条例強化についての意見募集(2024年7月12日記事参照)期間終了を受け、香港政府は関連する法的原則に関する実務規範を策定し、立法案を準備する。また、2025年末までに意見募集を行うため、香港域内の意匠登録制度の見直しを進める。
(5)対外プロモーション:香港政府と香港貿易発展局(HKTDC)は、2025年12月4~5日に開催される「BIP(Business of IP) Asia Forum 2025」においてIP融資を推進する。IPDはまた、中国国家知識産権局と世界知的所有権機関(WIPO)が共同主催する「中国専利賞」への地元企業の応募を推薦する。
なお、今次報告では、過去2年の報告(2023年11月1日記事、2024年10月25日記事参照)で記載されていた「標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書」を香港で実施するための準備作業を進めていく旨(2020年6月24日記事参照)に関して、言及されなかった。
施政報告の詳細は香港政府のウェブサイトで確認できる。そのうち、知財部分についてはIPDのウェブサイト
でも確認できる。
(注1)サンドボックス制度とは、革新的な技術やサービス(ドローン、自動走行、フィンテック、ロボットなど)を事業化する目的で、地域限定や期間限定で現行法の規制を一時的に停止する制度。企業が制約されずに、革新的な技術の事業化に向けて、砂場のように自由に試行錯誤できるところから命名された。
(注2)日本における特許、実用新案、意匠の総称。
(島田英昭)
(香港)
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