東方経済フォーラム、鉱物資源開発や発電設備の増強などに力点

(ロシア、ラオス、モンゴル、ウクライナ)

調査部欧州課

2025年09月10日

ロシアのウラジオストクで9月3~6日に東方経済フォーラムが開催された。主催者の発表(9月7日)によると、フォーラム期間中に締結されたビジネス関連文書は、358件、総事業規模にして6兆5,820億ルーブル(11兆8,476億円、1ルーブル=約 1.8 円)に上る。前回(2024年9月13日記事参照)と比較すると、件数は45件、金額は1兆ルーブル超増加した。

締結された主な合意文書をみると、アルミニウム生産および水力発電大手のEn+は、ブリヤート共和国、極東・北極圏発展公社と、モクスカヤ水力発電所およびイワノフスカヤ水力発電所の開発に向けたプロジェクト準備段階における協力について合意した。主催者の発表によると、事業規模は1兆1,000億ルーブル。鋳鉄や鉄鋼を製造するミリカンとハバロフスク地方、極東・北極圏発展公社は、ハバロフスク地方北部のトゥグロ・チュミカンスキー地区にある鉄鉱石鉱床における採掘・加工工場の建設に関する協定を締結。投資額は6,500億ルーブルを見込む。エネルギーおよび物流企業のONGKと中国の軒轅国際集団は、ユダヤ自治州と黒竜江省間のアムール川にかかる鉄道橋周辺での石油ガス化学ターミナル建設に関する契約を締結した。

5日の全体会合には、ウラジーミル・プーチン大統領、ラオスのソーンサイ・シーパンドン首相、モンゴルのゴンボジャブ・ザンダンシャタル首相が参加した。プーチン大統領は演説で、ロシアの21世紀の優先事項と位置付ける極東とシベリアの開発のこれまでの成果について触れた。過去10年間で極東地域の域内総生産(GRP)は2.5倍、投資額はロシア全体で1.5倍であるところ2倍に成長したなど、多くの主要指標、経済指標でロシア全体の成長率を上回っていると強調した。また、鉱物資源開発、エネルギー需要に対応する発電施設の増強、陸海空の国内外を結ぶ物流網の拡充、ビジネス環境改善などの具体的プロジェクトの推進について力説した。

演説後、司会者からウクライナ情勢について、欧米の停戦合意後の部隊派遣に関する質問を受けたプーチン大統領は、ウクライナで活動する外国軍隊は、正当な破壊目標とみなすと表明した。また、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との直接交渉については、モスクワを会談場所として実施する用意があるものの、領土などの主要な問題に合意する可能性が少なく、意義を見いだせないと述べた。

東方経済フォーラムは2015年からほぼ毎年開催され、今回で10回目となった。

(柴田紗英)

(ロシア、ラオス、モンゴル、ウクライナ)

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