山東省イ坊市で日中韓産業協力発展フォーラムが開催、協力的競争時代の戦略描く

(中国、日本、韓国)

青島発

2025年09月24日

ジェトロは9月11日、中国・山東省濰坊(イホウ)市において、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)、日中韓三国協力事務局(TCS)、同市政府との共催で、「2025日中韓産業協力発展フォーラム」を開催した。3カ国の政府関係者や企業代表ら約300人が参加した。今回のフォーラムは「開放・包容、協力・ウィンウィン」をテーマに掲げた。

TCSの李熙燮(イ・ヒソプ)秘書長は、従来のサプライチェーン中心の連携から、戦略的な「協力的競争」へと進化する3国関係の新たな段階が浮き彫りとなったとの認識を示した上で、保護主義の拡大が自由貿易秩序に与える影響を指摘し、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の深化と日中韓FTA(自由貿易協定)交渉の加速を訴えた。また、3カ国が積極的に協力すれば「2030年までに世界AI(人工知能)標準の45%、クリーンエネルギー技術の33%、バイオ市場の28%を主導できる」との分析を示し、「EUや米国が主導するイノベーションエコシステムに対抗する唯一の代替案となる」と述べた。

斎藤憲二駐青島日本総領事は、山東省と日本の深い相互依存関係を認識する一方、日中韓協力の意義が十分共有されていないと指摘し、過去のフォーラム(2024年11月1日記事参照)の政策建議を具体的行動に移し、山東省を真の日中韓協力モデル区にすることへの期待を表明した。

三菱UFJ銀行(中国)の増井憲副董事長は、少子高齢化への対応とAI技術の融合によるスマート産業の可能性を提起した。また、越境EC(電子商取引)に関して、日本のブランド力と中国のライブコマース技術の連携による「競争力ある協力モデル」の構築を提案した。

山東省の宋軍継副省長は、同省に進出する日本企業および韓国企業が計3万3,000社を超え、累計投資額が611億ドルに達することを紹介した。今後はグリーン低炭素、AI、海洋産業などの分野での協力深化に期待を寄せた。

濰坊市の劉運共産党委員会書記は、同市の域内総生産(GRP)が8,203億元(約17兆2,263億円、1元=約21円)に達し、スマート農業機械などの分野で国家級の産業クラスターに選ばれていることを強調し、製造業と農業を両輪とした産業競争力および科学技術イノベーションによる多元的発展戦略を地域発展の核心的優位性として位置づけた。

このほか、濰柴動力の王德成総経理は、地域産業チェーンの強靭(きょうじん)性とグローバル競争力のある産業エコシステムの構築を提案した。ヤンマーホールディングスの平岩昭技術戦略部部長は、食料安全保障や水素技術での協力成果を紹介し、循環型農業モデルの構築に向けた連携強化を表明した。

韓国の柳昌秀(リュ・チャンス)駐青島総領事は、地政学的変化と貿易における不確実性の高まりに対応するため、3国間の協力の再構築が必要と指摘するとともに、2025年10月末に韓国慶州で開催されるAPEC首脳会議の成功に向けて、3国間の協力精神が貢献することを期待すると表明した。

今回のフォーラムでは、RCEP協定の活用拡大、日中韓FTA交渉の加速、そしてスマート産業・グリーン転換・農業の技術革新といった分野での実務協力推進が合意され、日中韓が「協力的競争」の時代における新たな成長戦略を模索していることが明確となった。

写真 2025日中韓産業協力発展フォーラムの様子(ジェトロ撮影)

2025日中韓産業協力発展フォーラムの様子(ジェトロ撮影)

(皆川幸夫)

(中国、日本、韓国)

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