第2四半期GDPは前年同期比0.8%増、製造や小売りが好調

(ウクライナ)

調査部欧州課

2025年09月29日

ウクライナ国家統計局の発表(9月19日)によると、同国の2025年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比0.8%となった。前期比(季節調整済み)では0.2%だった。

ウクライナ経済・環境・農業省のモニタリングレポート(2025年4~6月各月版)によると、防衛、機械、建材、製薬などの製造業や小売業などが好調だった。一方で、農業は生産コストの上昇や労働力不足、天候不良などを背景に、輸送業は穀物収穫量の減少やウクライナ国内の天然ガスのトランジットの停止を背景に振るわなかった。

ウクライナ統計局が発表する景況感指数をみると、2025年第2四半期は109.6、第3四半期(7~9月)は110.0を記録した。2023年第2四半期以降、基準値となる100を超え、良好な景況を示している。

ウクライナ国立銀行(NBU、中央銀行)が毎月実施するビジネス活動期待指数(BAEI)をみると、4月の49.4から5月は50.8と改善したものの、6~8月は、50.0、48.3、49.0と、基準となる50以下になっている。消費者需要やエネルギーの安定供給、国際パートナーからの支援などはプラスに働くものの、ロシアによる重要インフラへの激しい攻撃や、原材料、燃料、労働コストなどの上昇、通貨フリブニャ安などは引き続き懸念材料だ。

インフレ率(消費者物価上昇率)は、2024年3月以降上昇し続けていたが、2025年5月をピーク(前年同月比15.9%)に低下に転じ、8月は13.2%となった。NBUは、農作物の新たな収穫による原材料などの価格低下や労働市場状況の改善などにより、物価の上昇圧力が緩和されたと評価している。

NBUは、為替相場を安定させ、インフレ率を目標の5%に導く金融環境を保つため、2025年3月以降、政策金利を15.5%で維持している(2025年3月17日記事参照)。7月のマクロ経済予測では、2025年第4四半期に政策金利の緩和サイクルが始まると予測しているものの、戦況など情勢を注視し、政策金利の引き下げの延期や追加措置も検討している。

公式為替レートは、2025年2月以降1ドル=41フリブニャ台で推移している。9月1日時点の外貨準備高は460億3,519万ドルで、輸入の5カ月分に相当し、為替相場の安定に支障がないとされる額を保持している。

(柴田紗英)

(ウクライナ)

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