欧州自動車部品工業会、EUに域内生産維持に向けた大胆な政策の実施を要請
(EU、中国)
ブリュッセル発
2025年09月16日
欧州自動車部品工業会(CLEPA)は9月10日、EUの自動車部品企業は中国や米国企業などと比較し、15~35%のコスト高を余儀なくされているとの調査結果を発表した(プレスリリース)。同調査は、CLEPAがコンサル業のローランド・ベルガーに委託したもの。要因として、高いエネルギー価格や人件費、規制順守に伴う負担に加え、EUの一貫性に欠ける政策を挙げた。また、競合国が保護主義的な措置を含む産業支援策を実施し、EU企業が構造的に不利な状況や不公正な競争環境に置かれていると指摘した。
同調査によると、EUが迅速に対策を打たなければ、電動化やEU域外への事業移転などの影響もあり、2030年までに最大で23%の付加価値、また間接雇用を含めると最大で35万人の雇用が失われると予測されている。EUに対し、生産コスト削減や規制緩和に向けあらゆる選択肢を評価し、競争力強化策を迅速に展開することや、新車からの二酸化炭素(CO2)排出基準を早期に見直し、脱炭素化に向け技術中立を重視するよう要請した。さらに、域内生産や企業の投資の維持に向け、部品・原材料の域内調達率の目標値設定と域内調達奨励策を通じた域内産製品への需要喚起や、バッテリー、半導体やソフトウエアのみならず、主要部品の域内生産能力への支援なども必要と訴え、産業界などとの対話を呼びかけた。
工場閉鎖などによる人員削減が増加、部品輸出では初の対中赤字を記録
自動車部品業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。CLEPAの9月4日付の発表によると、同部門では2025年上半期(1~6月)に2万2,000人の人員削減が発表されたが、新規求人数に大きな変動はなく、雇用の減少が続いている。人員削減の理由をみると、2020~2024年はリストラが最多(全体の約3分の2)で、工場閉鎖や倒産は22%だったが、2025年上半期は工場閉鎖や倒産が44%を占めた。CLEPAは生産縮小や倒産リスクの高まりと評し、事業環境の改善や競争力強化が早急に必要と述べた。
また、EUの自動車部品(バッテリーや電子部品を含む)の貿易収支は黒字が続いていたが、2025年上半期に約14億ユーロの赤字に転じた。近年、中国が輸出攻勢を強めており、EUの中国からの自動車部品(バッテリーや電子部品を除く)輸入額が、EUから中国への輸出額を初めて上回り、2025年上半期の貿易収支は2億6,500万ユーロの赤字となった。また同国からのバッテリーの輸入額は、2025年上半期に約110億ユーロに達した。バッテリーの輸入額は2022年下半期以降急増しており、2025年度上半期は2022年同期比で約2倍の水準となっている。
(滝澤祥子)
(EU、中国)
ビジネス短信 5b1c43139dfe21d6