日本とアゼルバイジャン、従来の油田開発に加え電力や物流分野での協力を議論
(アゼルバイジャン、日本)
調査部欧州課
2025年09月29日
12回目となる日本アゼルバイジャン経済合同会議が9月26日、東京都内で開催された。2022年のアゼルバイジャンの首都バクーでの開催以来、3年ぶりとなる。
日本アゼルバイジャン経済委員会の山田哲也委員長(伊藤忠商事執行役員/エネルギー・化学品カンパニーエネルギー部門長)と、アゼルバイジャン日本経済協力国家委員会のロフシャン・ナジャフ議長〔アゼルバイジャン国営石油会社ソカール(SOCAR)総裁〕を共同議長として112人、30の企業や団体が参加した。2国間経済協力について、伝統的な分野の現状と、新規分野における可能性の模索の両面から、両国の企業や関係機関が報告した。
従来の協力分野として、ACG油田(注)の両国企業による開発および同分野での人材育成における協力が紹介され、双方から環境への取り組みと業務効率の両立といった現代社会が直面する問題に対する姿勢が示された。日本側から、トルコでの繊維加工のための新たな原料調達先の候補としてアゼルバイジャンが挙げられたほか、国際協力銀行(JBIC)はCOP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)を主導したアゼルバイジャンの脱炭素化へのアプローチを指摘、日本の諸企業と連携してこれに参画する意向を表明した。
新たな協力分野として、日本側から、火力発電を主力とするアゼルバイジャンの電力産業への再エネの導入やデータセンターの活用による効率化が提案された。また、ロシア向けに供給が困難になったガス検知器、医療用抗菌カーテンなどの紹介が日本側企業からあった。一方、アゼルバイジャン側は、欧州とアジアの中間に位置する同国の地理的重要性を挙げてカスピ海横断国際輸送路(中央回廊)の開発に日本の物流企業を招いたほか、ナゴルノ・カラバフにおける復興事業のためにパートナーを探していると指摘した。アゼルバイジャン輸出・投資促進庁(AZPROMO)は、外国からの投資に対して様々な優遇措置や納税免除の特典が用意されているとして、投資先としてのアゼルバイジャンの魅力をアピールした。
企業からの報告の後、共同議長による議定書の署名に続き、協力覚書3件が締結され、具体的な協力推進に弾みをつけた。
(注)アゼルバイジャンのカスピ海沖に位置する油田で、アゼリ(Azeri)、チラグ(Chirag)、グナシリ(Gunashli)の3つの油田から構成される。
(鶴見敦子)
(アゼルバイジャン、日本)
ビジネス短信 560c36f5bbaa1e1a