マラウイ大統領選、ムタリカ氏が返り咲きの当選
(マラウイ)
ヨハネスブルク発
2025年09月30日
マラウイでは9月16日に大統領選挙が行われ、同24日、マラウイ選挙管理委員会(MEC)は、野党・民主進歩党(DPP)のピーター・ムタリカ氏が現職のラザルス・チャクウェラ大統領を破り当選、大統領職への返り咲きを果たしたことを発表した。ムタリカ氏は85歳で、前回2019年総選挙(注)では逆に、チャクウェラ氏に敗北していた。両氏は2014年総選挙でも対決しており、今回で3回目の対決だった。発表によると、ムタリカ氏の得票率は56.8%、チャクウェラ氏は33.0%、投票率は76.4%となった。
マラウイはアフリカ南東部に位置し、タンザニア、ザンビア、モザンビークに囲まれた内陸国で、国土は日本の約3分の1、人口は約2,273万人(IMF、2023年値)だ。主要産業は農業で、労働人口の約80%は農業および関連事業に従事しているという。1人当たりGDPは約591ドル(IMF、2023年値)と低く、農業生産性の向上に加え、産業化も含めた経済構造の変革が望まれている。
ムタリカ氏がまず直面するのはマラウイ経済の立て直しで、急務の課題になる。近年の経済成長率は、新型コロナ禍の反動成長があった2021年を除き、2%以下に低迷している。インフレ率は2022年が20.8%で、その後も2023年に28.8%、2024年に32.2%と上昇が続き、激しい物価高騰に見舞われている。マラウイ国民の大多数が1日2ドル以下で生活している中、首都リロングウェのスーパーマーケットでは、冷凍チキンが約20ドルという高額で販売されているという(9月25日付BBC)。加えて公的債務が増えつつあり、債務持続可能性を危惧する声もある。
大規模な汚職、低迷する経済、高騰する物価、頻発する停電、外貨不足など、マラウイ国民は現状の改善を求め、新たなリーダーを求めたとみられる。第1次ムタリカ政権下では、インフレ対策で一定の成果があったという。その実績を踏まえ、まずは物価高対策など、目に見えるかたちでの成果を出せるかが注目される。
しかし選挙戦中、ムタリカ氏は公の場にほとんど姿を見せず、早速、健康状態への懸念が出始めている。85歳という年齢で国を率いる体力があるのかという不安も広がっているもようだ。
(注)2019年5月の選挙結果に対し野党が異議を申し立て、同選挙に対するデモが同年6月から頻発したことを受け、2020年2月、憲法裁判所は申し立てを認め150日以内に再選挙を行うことを命じた。
(的場真太郎)
(マラウイ)
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