タミル・ナドゥ州投資会議で覚書締結、総額2,431億ルピーの92件

(インド)

チェンナイ発

2025年09月22日

インド南部タミル・ナドゥ(TN)州政府は9月11日、州北西部ホスールで投資会議「TN Rising Investment Conclave in Hosur」を開催し、国内外の企業との間で全92件の投資覚書(MoU)を締結した(添付資料表参照)。総額2,430億7,000万ルピー(約4,132億1,900万円、1ルピー=約1.7円)に及ぶ投資は4万9,353人の雇用創出を見込み、同州の製造業振興政策の成果を示すものとなった。

締結企業の1つ、電子機器受託製造(EMS)のゼットワーク・エレクトロニクス(Zetwerk Electronics)は太陽電池製造施設を設立する計画を発表し、500億ルピーの投資と約3,000人の雇用創出を見込んでいる。また、英国のロールス・ロイスとヒンドゥスタン・エアロノーティクス(HAL)の合弁企業インターナショナル・エアロスペース・マニュファクチャリング(IAMPL)は、TN州電子機器公社(ELCOT)が運営する経済特区(SEZ)内で、20億ルピーを投じて69人を雇用するジェットエンジン製造拠点の拡張計画を発表した。日系企業では、トヨタ紡織オートモーティブインディアは南部カルナータカ州ラマナガラとTN州ホスールに工場を持つが、今回の拡張計画で、ホスールを選択した理由として、従業員の定着率の高さと人件費の競争力を挙げた。

投資会議であいさつに立ったM・K・スターリン州首相はホスールについて、「南インドの製造業の中心地」と位置づけ、今後のインド経済を牽引する地域と強調した。さらに、産業発展を支えるインフラ整備の一環として空港建設計画にも言及し、「空港はホスールの製造業と輸出拠点としての地位を強化するカギとなる」と述べた。

また、同首相の会議出席に合わせて、台湾の台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)のスマート製造ユニット(注)の起工式が実施された。同社は、既存施設の拡張により自動化生産ラインを導入する予定だ。加えて、インド最大のPCBメーカーのアセント・サーキットは110億ルピーを投資し、ホスールのELCOTテクノロジーパーク内に多層・HDIプリント基板製造工場を建設する起工式を行った(「ヒンドゥー」紙9月11日)。

ホスールは、クリシュナギリ地区の都市で隣接するカルナータカ州ベンガルールから車で約1時間の距離に位置し、製造業に適した豊富な労働力を有している。地元の技術系教育機関から安定的な人材供給が可能なことが有名で、工業団地が不足するベンガルールに代わる新たな工場進出先として注目を集めている。今後は、空港の建設や新たな工業団地の開発を通じて、製造業や輸出拠点としての地位をさらに高める見込みで、TN州の産業政策の象徴的な成功事例となることが期待されている。

(注)スマートファクトリーの意味。モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ロボット技術などのデジタル技術を活用して、生産現場を「見える化」し、データに基づいた自動化・最適化・効率化を継続的に実現する工場。

(藤井芳彦)

(インド)

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