エネルギー供給組合KWG、3カ所目の大型蓄電池パークを稼働開始
(オーストリア)
ウィーン発
2025年09月22日
オーストリアのオーバーエスターライヒ州のエネルギー供給組合KWGは9月11日、ドイテンハム水力発電所で3カ所目の大型バッテリーパークを稼働したと発表した。KWGは同州南西部に水力発電所8カ所と太陽光発電所60カ所を運営している。同組合長のペーター・ゼヘトナー氏は「最新のバッテリー技術と従来の水力発電を組み合わせることで、KWGは地域のエネルギーのグリーン化を力強く推進している」と述べた。
新設したバッテリーパークは8ユニットで構成し、1.72メガワット時(MWh)の容量を持って、非常用電源機能も備えていることから、停電時には地域への電力供給が可能となっている。ハルト水力発電所とカウフィング水力発電所のバッテリーパーク、KGWエネルギー研究所のバッテリーパークと合わせて、KWGの蓄電容量は5MWhに拡大した。
特に春と夏にかけて、太陽光発電の急増により、日中に電力が過剰供給となるため、水力発電所の出力を抑制せざるを得ない状況が発生する。KWGはこの課題に対応し、水力発電から蓄電池に直接充電し、需要に応じて供給することで、電力の需給バランスを調整できる。ゼヘントナー氏は「現在、われわれは水力で発電した電力の25~50%を2~4時間、一時的に蓄電することが可能だ。運用を支えるために、KWGは独自の制御システムを開発し、新しいバッテリーパークの設置・稼働もほぼ全て自社スタッフで実現した」と述べた。
この規模の蓄電池はオーストリア国内ではまだ非常に珍しく、制度的な枠組みが難しいことがその理由の1つと同社は説明している。そのような中、KWGは地域エネルギー供給者として先駆的な役割を果たしているとした。
KWGは地域内の電気自動車(EV)用の充電ステーション設置にも取り組んでいる。現在は10カ所で23基のほか、最大出力225キロワット(kW)と150kWのハイパーチャージャーを各1基設置しており、さらに多くの充電ポイントを計画中だ。7月に同社は年間の充電ニーズに応じた月額固定料金制度を導入した。年間充電量500キロワット時(kWh)未満は月に19.90ユーロ、1,500kWh未満で同49.90ユーロ、3,500kWh未満では同99.90ユーロで、1KWh0.49ユーロの同社の単価より安く充電できる。電力は全て再生可能エネルギー資源からできている。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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