中央銀行の元総裁、ハンガリー経済は3〜5年で3%程度の成長回復が可能との見解

(ハンガリー)

ブダペスト発

2025年09月11日

ハンガリー・ブダペストで9月4日に開催されたハンガリー国際報道協会(HIPA、注1)主催の記者会見において、元ハンガリー国立銀行(中央銀行)総裁で、現在コルビヌス大学(在ブダペスト)で金融学の教授を務めるシュラーニ・ジョルジュ氏が、ハンガリー経済の現状と見通しについて講演を行った。

同氏は、2023年1月に前年比で25%まで上昇したインフレ率は現在4.6%程度まで低下し、実質賃金は過去9~10年間着実に増加、経常収支も2023年以降ほぼ黒字を維持しており、これらの指標はハンガリー経済の根底にある強さを示唆しているとして、「ハンガリー経済は危機的状況にはない」と強調した。

一方で、経済成長は過去3年間ほぼ停滞し、2025年のGDP成長率は約1%にとどまると見込まれている。過去15年間の労働生産性の伸びは年平均1%程度に過ぎず、中・東欧地域の中で最も低い水準であり、余剰労働力は見込めない。その結果、ハンガリーの1人当たりGDPは依然としてEU域内では下位に位置している。

シュラーニ氏によれば、こうした低成長の一因は、補助金や低金利融資といった国家の介入により非効率な企業が温存され、イノベーションや競争力強化が進展しなかったことにある。2022年まで投資(GDP比)は欧州で最も高い水準にあったが、その多くは技術革新や生産性向上に結びつかなかったと分析。また、医療、教育、研究開発といった主要分野における資金不足や、プロシクリカルな経済政策(注2)によって金融政策が緩和と引き締めを繰り返した点も課題として挙げた。

今後について同氏は、一貫した市場志向の改革が実施されれば、3〜5年で年3%程度の成長回復が可能だと指摘した。そのためには、補助金削減、競争環境の改善、EU資金の活用再開など、持続可能な成長軌道への回帰が必要とした。

(注1)ハンガリーに駐在する外国特派員などで構成される団体(Hungarian International Press Association)。ハンガリー投資促進庁(HIPA:Hungarian Investment Promotion Agency)とは異なる。

(注2)景気の変動(好況・不況)に合わせて、同じ方向に作用する経済政策。例えば、景気が良い時に景気をさらに刺激し、景気が悪い時にさらに抑制するような政策運営を指す。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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