難民急増問題から10年、難民の就業率がドイツ全体の水準に接近

(ドイツ)

ミュンヘン発

2025年09月04日

連邦雇用庁のドイツ労働市場・職業研究所(IAB)は8月25日、ドイツでの難民就業率に関する調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この調査はIABと連邦移民・難民庁(BAMF)、社会経済パネル(SOEP)、ドイツ経済研究所(DIW)が毎年実施している「IAB-BAMF-SOEP難民調査」のデータに基づき、ドイツが2015年に受け入れた難民を対象に行った。2015年にはシリア内戦などの影響で欧州、ドイツで難民申請者数が急激に増えた。ドイツでは2014年の難民申請者数は20万2,834人だったが、2015年は47万6,649人と約2.3倍となった。

調査結果によると、ドイツが2015年に難民として受け入れた外国人の2024年時点の被雇用率(注1)は64%だった。うち90%は社会保険への加入義務の対象者だった。ドイツ全体では、2024年第4四半期(10~12月)の被雇用率は70%、そのうち社会保険への加入義務対象者の割合は92%だった。また、2015年にドイツが受け入れた難民の約5%は2023年時点で自営業者となっており、自営業者を含むと、難民の就業率(注2)は全体で約70%と、ドイツ全体の就業率の76%に近づく結果となった。

しかし、2015年に受け入れた難民の2024年時点の被雇用率には、性別によって大きな差がある。男性は難民の被雇用率76%で、ドイツ全体の男性の被雇用率72%を上回った一方、女性は35%と、ドイツ全体の女性の被雇用率(69%)に比べて約半分にとどまった。IABによると、女性は(1)子育ての負担が大きい、(2)教育水準が低い、(3)ドイツ語学習支援や就労支援などを受け始めるのが遅れたことなどが要因とされている。2015年にドイツが受け入れた労働年齢層の難民のうち29%が女性だった。

なお、ドイツが2015年に受け入れた難民のうち、フルタイム労働従事者の2023年の月収中央値は2,675ユーロだった。これは、ドイツ全体のフルタイム労働者の平均賃金の70%に相当し、低賃金基準とされる66%を4ポイント上回るだけの水準だ。IABはその要因として、難民の平均年齢が若いことや、労働経験が浅いことを挙げている。

(注1)18歳から64歳までで、企業、団体、官公庁などに雇われている者。自営業者を含まない。

(注2)18歳から64歳までの人口のうちの就業者の割合。被雇用者と自営業者を含む。

(クラウディア・トーディ)

(ドイツ)

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