米シカゴ連銀経済報告、7月~8月前半の経済活動は控えめに拡大
(米国)
シカゴ発
2025年09月12日
米国連邦準備制度理事会(FRB)が9月3日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、7月から8月前半にかけての同地域の経済活動について、控えめ(modestly)に拡大したと報告した。関係者は、今後1年間は経済活動のわずかな拡大を予想している。
同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用はわずかに(slightly)増加した。関係者は、今後1年間は控えめなペースで雇用増加が続くと見込んでいる。労働市場の状況に関する報告は業界によってまちまちだが、複数の業界で労働市場のさらなる軟化を報告した。その一方で、製造業、建設業、マーケティング業の複数の関係者は、依然として熟練労働者の採用に苦労している。ある関係者は、移民取り締まり強化への懸念の高まりがヘルスケア・ホスピタリティー業界の労働者の出勤率を低下させていると報告した。
個人消費は緩やかに増加した(moderately)。自動車を除く小売売上高は全体として増加し、宝飾品、造園、コンピュータ分野で伸びた一方、マットレスとコンピュータ以外の家電製品は伸び悩んだ。9月末の税制優遇措置の廃止(2025年7月15日記事参照)を前に電気自動車(EV)の販売台数が伸びたことで、ライトビークル(乗用車と軽トラックの総称)の販売は緩やかに増加した。
企業支出はわずかに増加した。設備投資は低水準から上昇したが、今後1年間の支出はさらに小幅な増加となると予想している。
製造業の生産活動は控えめに拡大した。鉄鋼生産量はわずかに増加し、ある関係者はエネルギー部門の需要拡大を指摘した。加工金属の需要は、エネルギー・建設業界からの受注増加も一因となり、上昇した。
2025年の地区内での農業所得の見通しは、報告期間中ほとんど変化はなかった(little changed)。畜産業の収入見通しの改善が農業部門の見通しの悪化を相殺した。貿易情勢の不透明感は大豆輸出への懸念を引き続き高めている。乳製品価格はまちまち、卵価格は下落、生きた豚の価格は横ばいだったが、生きた牛の価格は過去最高値となった。また、農業機械販売は「低調」だった。関税引き上げによる肥料価格の上昇は2026年度の経営資金の調達コストに対する農家の懸念を強めた。
個々の調査対象項目ごとの詳細は添付資料表参照。
(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立って、年8回公表されており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(注2)アイオワ州、イリノイ州北部、インディアナ州北部、ウィスコンシン州南部、ミシガン州南部。
(星野香織)
(米国)
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