東京都とシティ・オブ・ロンドン、合意書を改訂、トランジション・ファイナンスも議論

(英国、日本)

調査部国際経済課

2025年09月12日

東京都とロンドンの特別行政区シティ・オブ・ロンドン・コーポレーション(以下、シティ・オブ・ロンドン)は9月8日、両者が2017年12月に締結した交流・協力に関わる合意書(MoU)を改訂したことを発表した。改訂により、金融分野におけるさらなる連携強化を図り、金融イノベーションの促進などに向けた取り組みを一層推進する。このほかサステナブルファイナンスにおける連携などにつき検討を開始することで合意した(東京都プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

翌9日には、在日英国大使館とともに、東京・ロンドングリーンファイナンスセミナー2025を都内で開催した。セミナーは2017年のMoUの下で2018年から実施されており、第8回となる今回はトランジション・ファイナンス(注1)をテーマに、日英の関係者が「基準と枠組み」「産業界の視点」などについて講演やパネルディスカッション、企業などによる取り組み事例の紹介を行った。

温室効果ガス削減の取り組みを支援する金融のガイドライン作りを進める

シティ・オブ・ロンドンは、セミナーのテーマになったトランジション・ファイナンスに関連する取り組みに注力している。英国政府と協力し、2024年10月にトランジション・ファイナンス市場の拡大に向けた報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表、2025年2月には評議会を設立した。同評議会は、2025年8月に企業レベル(注2)でのトランジション・ファイナンスのガイドライン案を公表、意見公募外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行っている。ガイドラインは、信頼できるトランジション・ファイナンスとは何らかの判断基準につき、企業や投資家、金融機関、政府などが共有可能な、最低限の共通事項を定めることを目的としている。具体的には、信頼できるトランジション・ファイナンスが満たすべき「原則」と、その原則が満たされているかを判断するための「要素」の2つを設定。要素については、さらに最低限期待されるべき共通の内容(Universal)と、産業や地域、市場の特性など状況に応じた内容(Contextual)の2つに分類している。本ガイドラインは、11月に実施予定の2回目の意見公募を経て、2026年3月に確定版が公表される予定だ。

(注1)東京都によれば、気候変動対策を検討している企業が、長期的な戦略に則した温室効果ガス削減の取り組みを行っている場合に、その取り組みを支援することを目的とした金融手法。

(注2)各社の移行計画や信頼ある道筋に基づき、企業向けに提供されるファイナンス。特定のプロジェクトやアセットを対象としたものとは異なる。

(山田恭之)

(英国、日本)

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