デュアルユース技術開発向け試験施設を開設、スタートアップを支援
(フィンランド、欧州)
ロンドン発
2025年08月28日
フィンランドの技術機器関連企業で同国国防軍の戦略パートナーのミロッグは8月7日、南部リーヒマキに、民間と軍事の両方の用途にソリューションを提供する革新的な二重用途(デュアルユース)技術の開発支援のための試験施設を開設した。同施設は防衛イノベーション・ネットワーク・フィンランド(DEFINE、注1)のイノベーションハブに設置されており、スタートアップを対象に防衛産業の要求に沿ったネットワーク技術やソフトウエアの開発のための試験環境を提供する。国内のスタートアップに加え、NATOの北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター「DIANA」(注2)に参加するスタートアップも対象にしている。
2025年6月には、国立技術研究センター(VTT)がDIANAのアクセラレーションプログラムを2026年からり実施することを発表した。プログラムに参加する企業に対して、メンタリングを行うとしている。実施にあたっては、アールト大学とヘルシンキ大学と連携する。DIANAとの関係では、VTTが2024年にオウル大学とVTT内にそれぞれ試験施設を設置することを発表している。
フィンランド国営の株式投資企業Tesi(Finnish Industry Investment)によれば、同国の防衛産業ではスタートアップの設立が急速に増えており、デュアルユース企業が急成長している(2024年10月7日記事参照)。同国のデュアルユース企業の6割はソフトウエア関連の企業とされている。
デンマークのダンスケバンク・グロース(ダンスケ銀行のグロース企業部門)とオランダ調査会社ディールルームが2024年11月に発表した「北欧防衛テックレポート」では、ベンチャーキャピタル投資額(2016年~2024年上半期)で宇宙分野と量子分野においてフィンランドが欧州の中でも上位に入っていることが示された。それぞれ4億8,800万ユーロ(欧州4位)、2億5,500万ユーロ(3位)で、北欧諸国の中では最大となっている。
(注1)リーヒマキ市主導で防衛・安全保障関連のイノベーションを促進することを目的としたネットワーク。国防軍、企業、教育機関、研究機関などが関与。
(注2)NATO加盟国全体の研究者や起業家と連携し、技術の開発を支援するNATOの機関。DIANAは試験施設を有し、産学官、スタートアップ、イノベーターと協力して、防衛や安全保障の課題を解決する。
(山田恭之、半井麻美)
(フィンランド、欧州)
ビジネス短信 fe6dfdcb21cf3a01