台湾、米国の関税率20%の通知に対し、さらなる引き下げの可能性を追求
(台湾、米国)
調査部中国北アジア課
2025年08月04日
米国のドナルド・トランプ大統領が7月31日に署名した大統領令において、台湾に対する関税率を20%としたことに関し、台湾の賴清徳総統は8月1日、自身のフェイスブック上で「米国は、ワシントンにおける台湾交渉団に対し、『暫定税率』を20%とすると通告した」とコメントした。賴総統は、当該税率について、台湾と米国との交渉が妥結に至っていないことから、米国側が「暫定税率」として発表したものだと説明。今後、交渉が合意に達した際には、関税率はさらに引き下げられる可能性があるとし(注1)、米国と今後もサプライチェーンにおける協力や1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく追加関税に関する問題を協議していくと表明した。
台湾行政院も8月1日に、米国側が同大統領令を発表したことに対し、プレスリリースを発表。同プレスリリースの中で、「台湾と米国の双方は、ともに合意に向けて今後も交渉を継続する意向を表明しており、次回会合の調整を行っている段階」とした。
台湾当局は、米国の関税政策が台湾の産業と雇用に与える影響に対処するための措置として、4月24日に総額4,100億台湾元(約2兆500億円、1台湾元=約5円)からなる「国際情勢に対応した経済社会および台湾の安全とレジリエンスを強化する特別条例」草案を行政院で承認(2025年5月2日記事参照)。その後、同草案は、台湾電力に対する補助金1,000億台湾元を削減し、1人当たり1万台湾元の現金給付を行うとする野党による改定案が立法院を通過していた。卓栄泰行政院長は、8月1日午前に総統府で開かれた記者会見において、「本日(8月1日)午後に関係省庁を招集し、ここ数カ月間の各業界への支援状況について説明するとともに、(20%とされた)『暫定税率』による影響についてあらためて評価する」としたうえで、同特別条例については「情勢に応じて全面的な調整を行う必要があると考えており、調整の程度、範囲、および今後への影響については、あらためて報告する」と言及。同特別条例は、台湾の安全保障、レジリエンスと密接に関わることから、早急に判断するとした(「中央社」8月1日)。
淡江大学国際事務・戦略研究所の林穎佑助教授は、「232条に基づく半導体などに対する追加関税による影響が、台湾などにとってさらに重要だ」とコメント。また、「台湾に課された(暫定)税率の20%は、ベトナム(20%)、インド(20%、注2)、スリランカ(20%)、タイ(19%)など東南アジアの諸国と同等程度だ」と指摘したうえで、「米政権は、中国からの輸出の『原産地ロンダリング』を防ぐため、これら国・地域を中国のハイテク産業を封鎖する緩衝地帯としようとしている」との見方を示した(「経済日報」8月1日)。
(注1)米国は4月2日に、台湾に対する相互関税率を32%と発表していた(2025年4月11日記事参照)。
(注2)インドに対する最新の相互関税率は25%(8月4日確認時点)。
(江田真由美)
(台湾、米国)
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