政府、大豆やトウモロコシなど主要農産品の輸出税率を恒久的に引き下げ
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年08月19日
アルゼンチン政府は、大豆、トウモロコシ、グレーンソルガム、ヒマワリなどの主要農産品の輸出に課税する輸出税の税率を再び引き下げた。今回は引き下げ期間を設定しておらず、恒久的な税率の引き下げとしている。
7月31日付で公布され、翌日に施行された政令526/2025号によると、トウモロコシとグレーンソルガムの輸出税率はこれまでの12%から9.5%に、ヒマワリは7.0%から5.5%に、ヒマワリ関連品は5.5%から4.0%に、大豆は33.0%から26.0%に、大豆関連品は31.0%から24.5%にそれぞれ輸出税率が引き下げられた。ただ、大麦と小麦は変更なく、引き続き9.5%となっている。また、牛肉と鶏肉の輸出税率もこれまでの6.75%から5.0%に引き下げられた。その他の対象品目とそれぞれの税率の詳細は同政令の付属書「ANEXO」
を参照。
政府は、2025年1月にも同様に主要農産品の輸出税率を引き下げていたが、6月末まで期間を限定し、7月1日以降から小麦と大麦を除いて同税率が引き上げられていた(2025年1月30日記事参照)。今回の政令によると、「現政権は、マクロ経済を安定させ、国内生産を発展させるため、生産や貿易に有利な条件を整える必要があると認識している」「生産者、加工業者、輸出業者に対して確実性をもたらすことが目標」だとした。
ジェトロは8月5日、マクリ政権時代に農業庁長官を務めたリカルド・ネグリ氏に、今回の輸出税率の引き下げをどのように捉えているか聞いた(注)。
輸出税率の引き下げは、生産拡大を促す非常に良い決定であり、生産者のリスクが1つ軽減されたという。農産品の輸出は、国が必要とする外貨準備高の積み増しに重要だが、なぜそれらを妨げるような輸出税が存在するのか。ネグリ氏によれば、「輸出税は、国の歳入全体の約8%を占める。一見すると少ないように思えるが、輸出税による税収は地方政府への分配の対象外であり、連邦政府の活動を支える貴重な財源であることから代替するのは容易ではない。また、制度を導入した当時の政権にとっては、課税対象となる事業者の数が他の産業よりも少なく、政治的にも導入が容易だったのだろう」と説明する。ただ、このような制度が存在することによって、アルゼンチンの農産物の生産や輸出が大きく損なわれているという。
なお、ミレイ政権は、全品目に対する輸出税の完全撤廃を目指すとしている。
(注)ネグリ氏は現在、農産品の生産にも携わり、ブエノスアイレス工科大学で教鞭(きょうべん)をとる。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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