デンマークは医薬品産業への影響を懸念、EU・米国合意受け
(デンマーク、米国、EU)
デュッセルドルフ発
2025年08月04日
EUと米国間での米国関税に関する大枠合意(2025年7月29日記事参照)を受け、デンマーク産業界からは、今後の経済見通しを心配する声が聞こえている。
デンマーク商工会議所は、7月27日にブライアン・ミケルセン最高経営責任者(CEO)の見解を発表した(プレスリリース、デンマーク語)。同CEOは、EU製品の大部分に対する関税率を一律15%とする今回の合意は、米国・EU双方のコストを引き上げるものと指摘し、米国消費者への負担増大やデンマーク企業の業績悪化につながると懸念を表明した。デンマーク統計局によると、2024年のデンマークの対米輸出額は3,610億デンマーク・クローネ(約8兆3,000億円、1デンマーク・クローネ=約23円)となっている。同氏は、デンマーク経済にとって、米国は最大の輸出相手国であることを挙げたうえで、米国国内で大型生産拠点を確立した企業、また、関税の影響を最小化するためにサプライチェーンを見直すなど様々な対策を準備している企業にとっても、今回の合意が悪影響を及ぼすことは避けられないと述べた。
また、デンマーク産業連盟も同日声明を発表した(プレスリリース、デンマーク語)。この中で、同連盟のラース・サンダール・ソレンセン最高経営責任者(CEO)は、数カ月に及び不透明・不明確な状況が続いていたドナルド・トランプ大統領の関税政策が収束方向に向かっていくと期待した一方で、関税率の高さについては、米国の一方的有利な立場で合意が妥結したとして強い不公平感を示した。特に今回の関税対象品目に含まれる医薬品については、デンマークからの大幅な輸出超過となっていることから、同産業に与える影響を懸念している。同氏は、今後の交渉によって協定の詳細が最終決定していく点を踏まえ、医薬品分野においてはさらなる追加関税の対象となるリスクを含むとした。なお、いかに貿易摩擦の激化によるデンマーク経済界への影響を最小限に抑えられるか、がポイントになるとの見方も示した。
(安岡美佳)
(デンマーク、米国、EU)
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