ルーマニア、EU復興基金の再交渉を完了、補助金は全額受給へ

(ルーマニア、EU)

ブカレスト発

2025年08月12日

ルーマニア政府は7月31日、欧州委員会と1年以上続けていた「国家復興・レジリエンス計画(NRRP)」の再交渉を完了したと発表した。ドラゴシュ・プスラル投資・欧州プロジェクト相が記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで明らかにした。プスラル氏によると、交渉の結果、EUの復興基金である「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」から総額135億7,000万ユーロの補助金を受け取り、主要プロジェクトへの投資に全額活用する見通しだ。一方、融資枠は当初の149億3,500万ユーロから80億1,000万ユーロに縮小され、これはルーマニアの財政赤字による借り入れ能力の低下が一因とされている。

インフラ整備では、高速道路向けに21億5,000万ユーロの補助金枠が確保され、ルーマニア東部の主要都市を結ぶA7モルドバ高速道路の5区間が補助金によって資金提供されることが決定した。一方、モルドバとルーマニア中部・北西部のトランシルバニア地方を東西に結ぶA8高速道路は補助金の対象から外れ、EU結束政策(注1)に基づいて拠出される「交通プログラム」および「SAFE(Security Action for Europe)プログラム(注2)」による代替資金が検討されている。

医療分野では、当初計画されていた5つの病院に加え、新たに3つの病院が建設対象に追加され、総額5億3,500万ユーロの資金が確保された。また、他の関係省庁と協力して、建物改修支援に1億8,000万ユーロ、上下水道インフラ整備に4億ユーロの資金を確保した。そのほか、司法制度のデジタル化に8,000万ユーロ、グリーン水素の生産支援に8,625万ユーロの予算が割り当てられた。さらに、新規投資として、1,200台の救急車導入(1億8,360万ユーロ)と、投資・開発銀行の資本強化(1億ユーロ)の2件も盛り込まれた。

(注1)EU域内の地域間格差の是正に向け、経済的に発展の遅れた加盟国あるいは地域を主な対象にしたEUの主要投資政策で、加盟国が策定し実施する投資計画に、EUと加盟国が共同出資するもの。

(注2)欧州委員会が2025年3月に発表した防衛投資策「欧州再軍備計画」で提案された、EU加盟国向けの新たな融資制度「欧州の安全保障行動(SAFE)」。EU理事会(閣僚理事会)は5月、同制度の設置法案を採択した。

(本吉美友)

(ルーマニア、EU)

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