日・ウクライナ経済復興推進フォーラム、工業や農業分野での協力に関心

(ウクライナ、日本)

調査部欧州課

2025年08月06日

ジェトロと経済産業省、ウクライナ経済・環境・農業省は8月4日、日・ウクライナ経済復興推進フォーラムを東京都内で開催した。翌5日の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)でのウクライナのナショナルデーに合わせて、同国政府要人や企業代表者が訪日する機会を捉えて行われた。フォーラムには同国関係者のほか、日本企業や国際機関から約300人が参加した。

主催者あいさつで、加藤明良経済産業大臣政務官は、具体的案件を通じた日本ならではの支援を通じて、ウクライナの経済的潜在力や、2国間協力の強化に取り組んでいくと発言した。

続いて登壇したウクライナのタラス・カチカ副首相(欧州・欧州大西洋統合担当)は、同国の復興とEU加盟への取り組みは不可分であり、法制度改革や汚職対策、デジタル化などの取り組みは、日本企業のウクライナでの活動を促進するものだと述べた。

写真 タラス・カチカ副首相のスピーチ(ジェトロ撮影)

タラス・カチカ副首相のスピーチ(ジェトロ撮影)

「ビジネス環境・レジリエンス(回復力)」をテーマとするパネルディスカッションでは、オレクシー・ソボレフ経済・環境・農業相が登壇して、ビジネス協力による経済成長の重要性を指摘し、特に工業生産分野で日本との協力を推進したいと述べた。

ジェトロ・キーウ事務所の柴田哲男所長はウクライナ経済のレジリエンスの背景として、企業の懸命な貢献を指摘し、日本企業も約40社が現地で戦時下にもかかわらず事業を継続していると述べた。そのうちの1社で、ワイヤーハーネスを製造するフジクラ・ウクライナのアンドリー・マツィヒン社長は、戦時下での事業再開・継続のカギとなる独自のリスク分析や、事業継続計画について説明した。

ウクライナ鉄鋼最大手メティインベストのボロディミル・ジューコウ・マーケティング部長は、プレハブ式の鉄鋼モジュールなどを活用して迅速なインフラ復興を目指す「スチール・ドリーム」プロジェクトについて紹介した。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

「製造業・農作物加工」をテーマとしたパネルディスカッションでは、ウクライナでホームセンターを展開するエピセンターのユリア・ピンテスクル副会長が、農産物の原材料加工から高付加価値製品、電気、ガスの生産までを網羅するカーボンニュートラルの循環型産業団地を建設する計画について説明し、日本企業との協力に意欲を示した。

ゼンショーホールディングスの小久保拓也シニアマネージャーは、世界各国で経営する飲食店での使用を念頭に置いたウクライナでの農産物生産や、現地小売りチェーン企業と連携した日本食展開の計画について説明した。

フォーラムでは、日本とウクライナなどの組織間で29件のウクライナ復興ビジネスに関する協力文書が交換された。

特別講演では、ウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人が子供や若者を中心に、国民に社会的・精神的支援を行うオレナ・ゼレンスカ財団の活動について説明した。

写真 オレナ・ゼレンスカ大統領夫人による特別講演(ジェトロ撮影)

オレナ・ゼレンスカ大統領夫人による特別講演(ジェトロ撮影)

(柴田紗英)

(ウクライナ、日本)

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